前田会長はEテレを「NHKらしさのひとつの象徴」と語ったが、NHKのチャンネル別の予算配分は、とてもEテレに力を入れているようには見えない。2019年度のEテレの予算は621億円で、総合テレビ(2842億円)の5分の1、スポーツ中継など娯楽番組が多いBS1(780億円)より低い。しかも、Eテレ予算は年々減らされているのである。NHKは2018年に放送開始したBS4KやBS8Kの予算を大幅に増やし、その分、他のチャンネルの予算を削っている。地上波では、予算が大きい総合テレビは8億円しか減らしていないのに対し、Eテレは15億円の減だ。(『平成31(2019)年度 収支予算と事業計画の説明資料』より)
実は、NHKはBS放送のチャンネルを1つ廃止する方針だ。来年度からスタートさせる新経営計画(案)で衛星放送を現在の4波から3波に減らし、将来的には2波にすることを検討している。前田会長自身が記者会見で、「今まで波を1個減らすと言いっ放しで、いつ減らすんだって、それも決めないで何だというお叱りもいっぱいありますので、次の中期経営計画で全部、それも見えるようにいたします」と語っているのである。
BSはチャンネルを減らすのに、通信などに転用すればより利用価値が高い周波数帯のEテレは、有効利用されているとはとても言えない現状なのに死守しようとするのは理屈が通らない。一方でNHKは、受信料を払わない世帯に「罰則」を盛り込もうと狙っている。これで「みなさまのNHK」と言えるのだろうか。