芸能

兵役延期認める「BTS法」でARMYの反応は二分、「改正望まぬ」理由は

aa(写真/GettyImages)

2022年まではBTSメンバー全員で活動できる(写真/GettyImages)

 韓国兵役法の改正により、人気アイドルグループ「BTS(防弾少年団)」メンバーの兵役時期の延期がほぼ確実となった。今回の改正は、大衆芸能分野の“特例”的措置としては初めてのこととあって、韓国だけでなく日本やアメリカ、イギリスなど世界で大きな注目を集めている。兵役延長を強く望む熱心なARMY(BTSファンの呼称)の思いが届いた形となったが、意外にもARMYの反応は二分しているという。ソウル在住のKDDI総合研究所特別研究員・趙章恩さんが解説する。

 * * *
 現在、韓国の18才以上の健康な男性は原則28才までに兵役が課されるが、2020年12月22日、韓国国防部(部は日本の省に当たる)が公布した兵役法の一部改正案により、文化勲章・褒章の受勲者のうち、文化体育観光部長官が「国威発揚の功績がある」と推薦した“優秀者”は、満30才まで入隊を延期できるようになった。これにより、BTSの最年長メンバー・JIN(28才)の兵役は、30才まで延長される道が開かれた。6か月後の2021年6月から施行される。

 兵役法の改正は、通常、海外に影響を与えるほどのニュースではないはずだが、12月1日に国会で改正案が議決されると、英BBCや米ニューヨークタイムズ、米CNN、英ロイターなど、世界の大手メディアが大々的に報じた。その理由はやはりBTSだ。BBCは、「JINはあと数日で28才になる。この改正はBTS最年長メンバーであるJINへの早めの誕生日プレゼントになった」と報じた。BTSをはじめK-POPスターの入隊は、一部のファンだけでなく韓国経済にも影響を与えるため国民の関心も大きく、特にBTSはアジアや米国など世界的な人気を誇るだけに大きく注目された。

 BTSは、2020年に米ビルボードシングルチャートで3曲も1位を獲得、2021年のグラミー賞にもノミネートされ、まさに今人気絶頂のアイドルだ。また、2018年には韓流と韓国語の世界拡散の功労を認められ「花冠文化勲章」も受章している。これらの点を踏まえれば、今回の法改正でBTSは兵役延期の対象になる可能性が高く、最年長のJINは2022年まで入隊の心配は無いとみられる。いちアイドルが国政を動かしたことで、政治家や韓国メディアは今回の法改正を「BTS法」と呼んだ。

 兵役は、大まかに言うと身体検査結果や学歴などに応じて、「現役兵」、「社会服務要員(行政業務支援)」、「芸術体育要員」、「専門研究・産業機能要員」、「特殊兵」、「士官候補生」などに分かれる。2020年6月2日以降に入隊した陸軍現役兵は、5週間の基本軍事訓練含め18か月、社会服務要員は21か月、専門研究要員は3年など、服務期間は配属先ごとに異なる。さまざまな分野の配属先があり、現役兵にならなくても兵役義務を果たせるが、20代のうちの1年半以上の自由が無くなることに変わりはないため、とてもつらい義務であることは間違いない。

 2018年5月までは、大学院に在籍していれば30才まで入隊を延期できた。K-POPアイドルや俳優らは少しでも長く芸能活動を続けるため、大学院に進学して学業を理由に入隊を延期してきたが、2018年の法改正で28才以上の入隊延期が厳格に制限されるようになり、よほどのことがない限り28才までに入隊しなければならなくなった。そのため、撮影中の俳優が突然招集されドラマが予定より早く打ち切られたり、ミュージカルの主演俳優が予告なく入れ替わったりと、度々混乱が生じてきた。

 芸術家やスポーツ選手らに対する特例はあるが、これにも厳しい条件がある。国際コンクールで2位以上に入賞する、オリンピックで銅メダル以上を獲得する、アジア競技大会で金メダルを獲得するなどだ。この条件をクリアできれば、4週間の基礎軍事訓練(配属先ごとに異なる)の後、34か月間自身の特技分野で従事する、つまり、4週間訓練を受けるだけで自分の生活に戻れるのだ。ただし、34か月間(544時間)は青少年向けの講習を行ったり、公益キャンペーンに参加するなど社会奉仕活動をしなければならない。

 兵役法を巡っては、2000年代以降の韓流ブームにより、「芸能人も国威発揚に貢献したのに兵役特例の対象にならないのはおかしい」という世論の声が噴出し、長年議論が続いていた。今回の法改定は、そうした声が少なからず反映された大きな制度緩和と言えるだろう。だが、適用のハードルが高すぎて、「BTSメンバー以外の芸能人に延期できる人がいるのか」と疑問視する声もある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(時事通信フォト)
【スクープ】二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏が年下30代女性と不倫旅行 直撃に「お付き合いさせていただいている」と認める
NEWSポストセブン
雅子さまにとっての新たな1年が始まった(2024年12月、東京・千代田区。写真/宮内庁提供)
《雅子さま、誕生日文書の遅延が常態化》“丁寧すぎる”姿勢が裏目に 混乱を放置している周囲の責任も
女性セブン
M-1王者であり、今春に2度目の上方漫才大賞を受賞したお笑いコンビ・笑い飯(撮影/山口京和)
【「笑い飯」インタビュー】2度目の上方漫才大賞は「一応、ねらってはいた」 西田幸治は50歳になり「歯が3本なくなりました」
NEWSポストセブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン
M-1での復帰は見送りとなった松本(時事通信フォト)
《松本人志が出演見送りのM-1》今年の審査員は“中堅芸人”大量増へ 初選出された「注目の2人」
NEWSポストセブン
浩子被告の顔写真すら報じられていない
田村瑠奈被告(30)が抱えていた“身体改造”願望「スネークタンにしたい」「タトゥーを入れたい」母親の困惑【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
「好きな女性アナウンサーランキング2024」でTBS初の1位に輝いた田村真子アナ(田村真子のInstagramより)
《好きな女性アナにランクイン》田村真子、江藤愛の2トップに若手も続々成長!なぜTBS女性アナは令和に躍進したのか
NEWSポストセブン
筑波大学・生命環境学群の生物学類に推薦入試で合格したことがわかった悠仁さま(時事通信フォト)
《筑波大キャンパスに早くも異変》悠仁さま推薦合格、学生宿舎の「大規模なリニューアル計画」が進行中
NEWSポストセブン
『世界の果てまでイッテQ!』に「ヴィンテージ武井」として出演していた芸人の武井俊祐さん
《消えた『イッテQ』芸人が告白》「数年間は番組を見られなかった」手越復帰に涙した理由、引退覚悟のオーディションで掴んだ“準レギュラー”
NEWSポストセブン
10月1日、ススキノ事件の第4回公判が行われた
「激しいプレイを想像するかもしれませんが…」田村瑠奈被告(30)の母親が語る“父娘でのSMプレイ”の全貌【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン