国内

「最底辺の家庭」で育った40歳の配達員は絶望を考えることもやめた

新型コロナウイルスによって仕事を失い「配達員」になった(イメージ、時事通信フォト)

新型コロナウイルスによって仕事を失い「配達員」になった(イメージ、時事通信フォト)

 2020年4月に続き、二度目の緊急事態宣言が首都圏に発令され、他の都市圏にも出されようとしているいま、ネットでは再び現金の一律給付を求める声が上がっている。それに対し、選ばなければ仕事はあり稼げるのだから、貧者は貧困をみずから選んでいると主張して反対する人たちも出現している。必ず現れるこの「選ばなければ仕事はある」という言い分は、低賃金で何も保障されない仕事が幅を利かせる遠因でもある。複数のフードデリバリー事業者と契約して配達員として暮らす40代男性の、希望と絶望についてライターの森鷹久氏がレポートする。

 * * *
 コロナ禍でもっとも注目されている業種の一つに「配達」を挙げることができるだろう。

 政府や自治体による「外出自粛」の要請もあり、客が減った飲食店が、続々フードデリバリー事業者と契約し始めている。それまで出前サービスを行ってこなかった店舗も、商品を顧客に届けるサービスと契約することで販路を開拓、少しでも収益を確保し、コロナ禍をなんとか生き延びようともがいているのだ。街の中を多くの配達員が行き交っている光景は、コロナ禍以降全国で見られるようにもなった。

 都内在住のフリーター・桂豊明さん(仮名・40才)は、そんな「サービス」の配達員の仕事によって生計を立てている一人。現在では、複数事業者の配達員として登録をしており、昨年の夏以降、丸一日休んだ日はないと話す。

「以前は倉庫で働く派遣社員で、昨年の4月以降は給与の出ない在宅勤務となり、6月に契約を切られました」

 桂さんは小学校、中学校時代にいじめに遭い、不登校になった。いや、原因はいじめだけではない。父親が病気で働けず家計は火の車、にも関わらず、毎日酒を飲んで母親を殴るような家庭で育ったことも影響している。劣悪な家庭環境に耐えられなくなった母親は、小さかった桂さんを置いて一人、家を出ていった。今も母の行方は分からない。残された働けない父と子供だけの暮らしは生活保護頼み、自分の家は「最底辺だ」と、小学校の低学年頃には意識していたという。

「給食が一番のご馳走で、給食が楽しみで学校に行っていました。でも、学年が上がるにつれて、僕は普通の人と同じように暮らしてはいけない、勉強する資格もないと思うようになりました。もらっていた生活保護は税金だと知り、申し訳ないと思ったからです」

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
「服のはだけた女性がビクビクと痙攣して…」防犯カメラが捉えた“両手ナイフ男”の逮捕劇と、〈浜松一飲めるガールズバー〉から失われた日常【浜松市ガールズバー店員刺殺】
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《左耳に2つのピアスが》地元メディアが「真美子さん」のディープフェイク映像を公開、大谷は「妻の露出に気を使う」スタンス…関係者は「驚きました」
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(27)と伊藤凛さん(26)は、ものの数分間のうちに刺殺されたとされている(飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
「ギャー!!と悲鳴が…」「血のついた黒い服の切れ端がたくさん…」常連客の山下市郎容疑者が“ククリナイフ”で深夜のバーを襲撃《浜松市ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
和久井学被告と、当時25歳だった元キャバクラ店経営者の女性・Aさん
【新宿タワマン殺人・初公判】「オフ会でBBQ、2人でお台場デートにも…」和久井学被告の弁護人が主張した25歳被害女性の「振る舞い」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(Instagramより)
《愛するネコは無事発見》遠野なぎこが明かしていた「冷房嫌い」 夏でもヒートテックで「眠っている間に脱水症状」も 【遺体の身元確認中】
NEWSポストセブン
大谷翔平がこだわる回転効率とは何か(時事通信フォト)
《メジャー自己最速164キロ記録》大谷翔平が重視する“回転効率”とは何か? 今永昇太や佐々木朗希とも違う“打ちにくい球”の正体 肩やヒジへの負担を懸念する声も
週刊ポスト
『凡夫 寺島知裕。「BUBKA」を作った男』(清談社Publico)を執筆した作家・樋口毅宏氏
「元部下として本にした。それ自体が罪滅ぼしなんです」…雑誌『BUBKA』を生み出した男の「モラハラ・セクハラ」まみれの“負の爪痕”
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
「佳子さまは大学院で学位取得」とブラジル大手通信社が“学歴デマ報道”  宮内庁は「全報道への対応は困難。訂正は求めていません」と回答
NEWSポストセブン
米田
「元祖二刀流」の米田哲也氏が大谷翔平の打撃を「乗っているよな」と評す 缶チューハイ万引き逮捕後初告白で「巨人に移籍していれば投手本塁打数は歴代1位だった」と語る
NEWSポストセブン
花田優一が語った福田典子アナへの“熱い愛”
《福田典子アナへの“熱い愛”を直撃》花田優一が語った新恋人との生活と再婚の可能性「お互いのリズムで足並みを揃えながら、寄り添って進んでいこうと思います」
週刊ポスト
生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト