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東武鉄道でSLの「音録り」に挑んだ音響のプロが振り返る「ハードな体験」

音響機器メーカーのティアックが東武のSL大樹の音を録音した

音響機器メーカーのティアックが東武のSL大樹の音を録音した

「音鉄」「録り鉄」と呼ばれる鉄道ファンがいる。彼らは鉄道やその周辺の音、発車メロディや駅構内・車内アナウンス、警笛やモーター音なども聴いて楽しむ人たちだ。そういった趣味を明確に持つひとでなくても、鉄道の音と過去の記憶が重なり、郷愁を呼び覚まされる人も多いのではないか。ライターの小川裕夫氏が、東武鉄道と音響機器メーカーのティアックに、SLの「音」をプレゼントするユニークな企画について聞いた。

 * * *
 年が明けても新型コロナウイルスの脅威は収まらない。第3波の襲来で感染者数は大幅に増えた。1月7日、政府は一都三県を対象に再び緊急事態を宣言。13日には対象の府県を拡大させた。

 昨年に緊急事態が宣言された際、多くの人たちは外出を控えた。STAY HOMEにより、飲食店やレジャー施設などでは売上が激減。経営危機に陥った。私たちが生活するために欠かせない鉄道でも、テレワークの導入などによって通勤需要は減退した。それに伴い、各社は売上を減少させている。

 政府からの要請もあって、今回の緊急事態宣言でも鉄道各社は終電の繰り上げ、減便といった措置を講じることになった。これらによって、鉄道各社は売上を減らすだろう。コロナ禍の厄介な点は、いつ収束するかの見通しが立たない点にある。現在の終電繰り上げや減便がつづけば、いくら生活に欠かせない鉄道であっても経営的に持ちこたえられない。

 そんな中、北関東一円に広大な路線網を有する東武鉄道が1月16日から風変わりな取り組みを始めている。それが、SL大樹の音をプレゼントするというキャンペーンだ。

「弊社は2017年から鬼怒川線でSLを運行してきました。同キャンペーンは、昨年9月頃から準備を進めていた企画です」と話すのは、東武鉄道広報部の担当者だ。

 東武は1966年にSLの運行を終了。しかし、「鉄道産業文化遺産の保存・活用」、「日光・鬼怒川エリアの活性化」、「東北復興支援の一助」という3つの目的を掲げて、2017年にSLの運行を復活させた。

 SLを復活させるにあたり、わざわざ各地で保存されていた良好なSLを探し回った。そして、SL運行には欠かせない機関士も費用を投じて養成した。SL復活に並々ならぬ情熱を注ぎ、多額の費用を投じている。

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