ゆえにワクチンを接種する際は徹底した安全性の検証が必要なのだが、詳しくは後述する通り、今回のワクチン開発は異例ずくめなので不安は拭えない。
そうした副反応のリスクを考えると、「どのメーカーがつくったワクチンが安全なのか」という関心は自然に出てくるはずだ。そもそも、製薬メーカーは完璧に同じワクチンを製造しているわけではなく、それぞれ独自の手法でつくられていて、根本的な作用の仕方が違うものもある。間もなく日本人が接種することになるファイザー製、モデルナ製、アストラゼネカ製のワクチンでも、三者三様の特徴を持っていて、もちろん副反応のリスクも違うのだ。
自分はどのメーカーのものを打つのか──それに関心を持たないわけにはいかない。
そもそもワクチンの“種類”が違う
今回のワクチンが“前例にない”とよくいわれるのは、「開発スピードが異様に早い」からだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが指摘する。
「通常の医薬品なら3~5年ほどかかるところ、今回は遺伝子情報が公開されてから、1か月以内に初期のワクチンがつくられました。これは過去に例のない早さです」
ワクチンそのものの“種類”も異例だ。日本に供給されるファイザー製とモデルナ製のワクチンは「mRNAワクチン」、アストラゼネカ製は「ウイルスベクターワクチン」というタイプである。
「通常のワクチンは、弱毒化や無力化したウイルスを体に打ち込みますが、ファイザー製とモデルナ製のmRNAワクチンはウイルスそのものではなく、ウイルスの遺伝子情報を体に打ち込み、免疫反応を呼び起こすという仕組みです。
また、アストラゼネカ製のウイルスベクターワクチンは、アデノウイルスという風邪ウイルスを無害にしたものに、新型コロナの遺伝子情報を組み込んだものを接種します。
3社とも遺伝子情報を用いた珍しいタイプのワクチンであり、なかでもmRNAワクチンは世界初の試みで、人体にどのような影響が出るかの評価が完全に不透明です」(一石さん)
保存温度も違う。一般にワクチンは低温下で管理、輸送、保存しないと使い物にならなくなってしまう。mRNAワクチンはファイザー製が氷点下70℃、モデルナ製が氷点下20℃で管理する必要がある。
「このタイプのワクチンは分子構造がとても不安定なため、超低温で正確に管理しないと劣化し、効き目がなくなったり、思わぬ副反応を起こしたりする可能性があります」(一石さん)