ライフ

新型コロナ予言と話題の小松左京氏 筒井康隆氏が慧眼の源泉を解説

SF作家・小松左京氏との思い出を筒井康隆氏が振り返る

SF作家・小松左京氏との思い出を筒井康隆氏が振り返る

 日本を代表するSF作家・小松左京の小説群は、たびたび「未来を予見していたよう」と評されてきた。小松左京氏、星新一氏とともに「日本SF御三家」と言われる作家・筒井康隆氏が、生前の小松氏との思い出を振り返り、その先見性について語った。

 * * *
──小松さんの『復活の日』は1964年に発表された小説ですが、昨年から続く新型コロナ禍を予言していたと話題になりました。

筒井:当時、発売されてすぐに読みました。私の弟の嫁さんが大阪大学薬学部出身なのですが、彼女が読んでウン、ウンと頷いていました。専門の人も感心するようなアイデアだったということでしょうね。

──1973年発表の『日本沈没』で描かれたプレートテクトニクス理論も、当時の最先端の理論だったそうですね。

筒井:最新というか、私は読んで初めて知って、そんなものがあるのかと驚きました。

──小松さんの作品は膨大な知識に基づいていますが、筒井さんは、小松さんの知識量を収納具の「長持」に例えて論じた「小松左京論」を執筆されています。

筒井:小松さんは、仕入れた知識を皆の前でよく喋っていました。開陳することで、長持に入れるように情報を整理し、知識を身体の中に染みこませていたのだと思います。

 一度、ジャズピアニストの山下洋輔と3人で飲んでいたとき、彼の前で小松さんがジャズの歴史を開陳したこともあった。彼がジャズピアニストだと分かっていたはずなので、よくやるなぁ、と思いましたよ。

──そうした知識が、現代にも通じる慧眼の源泉になったのでしょうか。

筒井:小松さんは何かのウイルスや風邪が流行ったときに、その現実の様子を拡張解釈して、何が起こるかを考えて書いていました。我々は“外挿法=エクストラポレーション”と言いますが、風邪の流行をエクストラポレートして、医療崩壊はもちろん、人類が滅亡する寸前まで書いたわけです。コロナが嫌らしいのは、人類が滅亡するほどではないが、ウイルスも消滅しないまま、流行が続いているところですね。

──小松さんとの関係では、『日本沈没』の刊行直後に、筒井さんは『日本以外全部沈没』を発表されました。作品の最後に〈原典『日本沈没』のパロディ化を快諾下さった小松左京氏に厚く御礼申し上げます〉と書いていらっしゃいますね。

筒井:あれは小松さんや星新一さんと飲んでいたとき、星さんが「日本以外を沈没させたらどうだ」というアイデアを思い付いた。でも、星さんが書くテーマじゃないから私がもらって、その場で小松さんに書いていいかと聞いたんです。

関連記事

トピックス

左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
お笑いコンビ「ガッポリ建設」の室田稔さん
《ガッポリ建設クズ芸人・小堀敏夫の相方、室田稔がケーブルテレビ局から独立》4月末から「ワハハ本舗」内で自身の会社を起業、前職では20年赤字だった会社を初の黒字に
NEWSポストセブン
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン
「オネエキャラ」ならぬ「ユニセックスキャラ」という新境地を切り開いたGENKING.(40)
《「やーよ!」のブレイクから10年》「性転換手術すると出演枠を全部失いますよ」 GENKING.(40)が“身体も戸籍も女性になった現在” と“葛藤した過去”「私、ユニセックスじゃないのに」
NEWSポストセブン
「ガッポリ建設」のトレードマークは工事用ヘルメットにランニング姿
《嘘、借金、遅刻、ギャンブル、事務所解雇》クズ芸人・小堀敏夫を28年間許し続ける相方・室田稔が明かした本心「あんな人でも役に立てた」
NEWSポストセブン
第一子となる長女が誕生した大谷翔平と真美子さん
《真美子さんの献身》大谷翔平が「産休2日」で電撃復帰&“パパ初ホームラン”を決めた理由 「MLBの顔」として示した“自覚”
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《ラジオ生出演で今後は?》永野芽郁が不倫報道を「誤解」と説明も「ピュア」「透明感」とは真逆のスキャンダルに、臨床心理士が指摘する「ベッキーのケース」
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
元フジテレビアナ・渡邊渚さん最新インタビュー 激動の日々を乗り越えて「少し落ち着いてきました」、連載エッセイも再開予定で「女性ファンが増えたことが嬉しい」
週刊ポスト