「志駕さんの小説の魅力は、なんといっても、その描写にあると感じました。咲希と、サークルの友人で同じくパパ活をしているユイカがファミレスでおしゃべりをするシーンでの『399円のドリンクバーの二杯目のホットコーヒーを飲みながら』とか『チョコバナナサンデーを頬ばった』。若手週刊誌編集者の友映の『マニュキアが剥げかけた指先』などのセンテンスで、その子たちの状況が、ふっと風が吹くように一瞬で想像できる。自分とかけはなれた登場人物であっても“きっとこんな子なんだろう”と違和感なくその心中に入ってゆくことができるんです」
 
 パパ活女子とともに週刊誌の編集部の様子もふんだんに描かれる本作には、新型コロナウイルスの感染拡大をはじめ、志村けんさんの急逝、小池都知事の再選、アベノマスクの配布など、2020年のニュースがふんだんに詰め込まれている。とくにコロナによって捜査や取材が足止めを食らう、就活がうまくゆかなくなるなど登場人物たちも大きな影響を受ける。原田にとっても2020年はコロナに翻弄された年だった。

「ぼくも、就活に影響が出た咲希やテレワークを始めた友映たちのように、様々な苦労がありました。コロナ禍の中で、出演していた舞台も中止となり、映像の仕事の在り方も変わってきた中で、YouTubeを始めたんです。

だけどこの年になって、新しいことを始めるって、すごく覚悟がいる。YouTubeは、最初から脚本があるテレビや芝居の仕事と違い、自分で“発信”の場を作ることから始めなければならない。まずそもそも“何を発信するのか”から問われます。僕の場合、旅番組でお風呂に入ることが多いので、裸一貫、『入浴』に特化した映像を配信することにした。しかし、コロナ禍の影響で、地方の温泉にいけない。そのためリモートで以前にいった温泉地の方と配信したり、一人、入浴しながら思うことを独白する『ひとり湯』という企画を立ち上げたりと、様々に工夫はしているのですが、なかなか数字に反映しない。どうしたらよいのか、“見えない魔物”と戦っているような1年でした。

ただ、苦労が多かっただけに、“挑戦”をした1年でもあった。本作でも、主人公たちはトラブルに巻き込まれても、機転を利かせたり、自らの能力をフルに生かしたりと、壁を打ち破ってたくましく生きてゆく。まだまだ先の見えないいまだからこそ、様々な世代の人に読んでほしい作品だと思います」

◇原田龍二(はらだ・りゅうじ)
1970年10月26日生まれ 俳優・タレント。現在、YouTubeで「原田龍二の湯~チューブ」を配信中。ブログ「BRO.原田龍二オフィシャルブログ」が人気。

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