女優さんなので当たり前だけど美しく、エイジレス。今回、浜辺美波さんの母親役で実年齢に近い44歳の女性を演じているけれど、見た目にはどうにも無理がある。公式写真を見ていると明らかに姉妹なほど、若々しい。これだけで“視聴欲”はそそられるけど、さらに彼女の魅力を加えるとしたら、底抜けの明るさだ。番宣で出演しているバラエティで見事な天然ぶりと、全力疾走ぶりを見せている。
2020年末の『絶対に笑ってはいけない大貧民Go Toラスベガス24時!』(日本テレビ系)では、完璧なまでの変顔と“ホホホイダンス“を披露。面白いことは間違いないけれど、完全に芸人潰しだと笑ってしまった。嫌味と明るさ表裏一体にある碧の“陽キャ”も、菅野さんにかかればいい化学反応のようなものが発生して、完璧な演技になるんだろうと納得をした。
振り切ったギャグと演技は、菅野ブランドと呼びたい
菅野さんの“癖キャラ”ハマりはまだある。最近出演したドラマだと『監獄のお姫さま』(TBS系・2017年)で演じた経済アナリストは、脱税で実刑を受けてもめげることのない明るいおばさんだった。ドラマ内で『ライク・ア・ヴァージン』をクネックネで踊り、途中から、唇を突き出して親指を立て、にゃんこスター(お笑いコンビ)のモノマネも挟んでいた。古い作品だと『働きマン』(日本テレビ系・2007年)の松方弘子役でも、24時間、編集者の仕事に全てを捧げる、猪突猛進なスクープバカ姿が本当によく似合っていた。
普通の人の役であれば、演じたい人も演じられる人もたくさんいる。演じる枠だってたくさんある。でも上記に挙げてきたような“癖キャラ”は、ジグソーパズルのようなものでハマるまでは難しい。そこをクリアしている菅野さんにはこれからも振り切って、演じ続けてほしいのだ。その振り切ったギャグと演技は、菅野ブランドと呼びたい。
さて『ウチカレ』。北川悦吏子による脚本について色々とネットで言われているらしいが、個人的には大御所の説得力があると思っている。それに気づいたのは「誰かのためになんかやれるって幸せなことなんだよ。自分のためになんかできることなんてたかが知れてる」「恋ってもっと気まぐれだよ?」と、メモりたくなるワードが飛び出していたからだ。これは若手クリエイターから湧き出てくるものではないはず。第4話の放送からは碧が新しい恋に目覚めるらしいので、またメモワードが飛び出すことを期待している。
【プロフィール】こばやし・ひさの/静岡県浜松市出身のエッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター。これまでに企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊以上。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。