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事件の後、仮埋葬された女性の遺体が盗まれるという怪事件も起こり、犯人は逮捕されたが、一連の騒動の真相は謎に包まれている(イラスト/ドナ)

【坂田山心中】

 1932年5月、神奈川県大磯町にある坂田山の林の中で若い男女の遺体が見つかった。男性は慶應義塾大学生(享年24)、女性は静岡県の素封家の娘(享年21)で、かねてから相思相愛の関係だった。だが、女性の両親が交際に反対し、女性側に見合いの話が持ち上がったことから、前途を悲観して服毒自殺をしたことが後に判明。

 女性は学生服を着た男性の腕に抱かれた状態で発見され、警察が「女性の遺体はきれいだった」と発表したため、当時の東京日日新聞は「純潔の香高く 天國に結ぶ戀」と記事を掲載。映画やレコード化され、大ヒットした。

「事件後、坂田山で自殺をする人が相次ぎ、その年だけで20組もの男女が心中をしたそうです。でも、現代なら、これだけ社会に影響を与えてしまうことはあまりないと思うんです。いまなら慶應の大学生と令嬢が心中するなんてこともないでしょうし、仮にもしセックスしていたとしても、『傷ものになったから嫁に行けない』といわれる時代でもない。当時はそれだけ処女性に価値が置かれていたということだと思います」(川奈さん)

【プロフィール】
川奈まり子(かわな・まりこ)/作家。東京生まれ。女子美術大学短期大学部グラフィックデザイン教室卒業。『東京をんな語り』(KADOKAWA・2月25日発売)では、「坂田山心中」についても言及している。

取材・文/加藤みのり イラスト/ドナ

※女性セブン2021年2月18・25日号

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