そうした最悪の事態を予期しながら、感染第2波さなかの8月28日に突然、持病の悪化を理由に退陣を表明し、菅義偉・首相が政権を継いだ。当時は、「病気なら仕方ない」と同情された。
ところが、退陣後の安倍氏は入院や静養するのではなく、コロナ対応を投げ出したことを棚に上げて「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」会長に就任して政治活動を再開。「“再々登板”に意欲がある」(細田派幹部)といわれるほどだ。
しかも、置き土産となるはずのPCR検査体制の拡大は不十分なままで、接触確認アプリの「COCOA」は感染者と接触しても通知が届かない不具合が発覚した。チェックしなかった菅首相は他人事のように「お粗末」と言い、言い出しっぺの安倍氏本人は今も知らんぷりを決め込んでいる。無責任極まりない態度だ。
安倍政権の初動の失敗には、「これは風邪だから、はやり病だから」と楽観視していた麻生太郎・副総理兼財務相をはじめ、梶山弘志・経産相、赤羽一嘉・国交相、萩生田光一・文科相ら菅政権で再任された大臣たちも連帯責任を負っている。
※週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号