――本日のインタビューは、現場医療者の立場としてのお話をうかがった。改めて、医療を題材にする小説家として心がけていることは?
知念:間違った医療情報を流さないことです。僕が書くエンターテインメント小説でも、そこで誤情報を流すと、その知識を信じた読者の健康被害につながる可能性があるから。
たとえば、ミステリー小説における警察の描写(捜査手順や犯人造形)などにフィクションが入るのは許されると思っていますが、医療情報に関してはそうはいきません。できる限り最新の知識を仕入れ、論文や参考書を読む。エンターテインメントを提供しているはずが人を不幸にするなんていうことはあってはいけない。そこはとても気を使っています。
【プロフィール】
知念実希人(ちねん・みきと)/1978年沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒。2011年「レゾン・デートル」で島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞。翌年同作を『誰がための刃』と改題しデビュー。内科医として従事しながら、医療ミステリーを中心とした小説作品を執筆。2018年より、『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』で3年連続本屋大賞ノミネート。最新作は『十字架のカルテ』。