国内

NYで見た「森辞任」と世界で活躍する日本人女性たちの落差

森喜朗氏と橋本聖子氏はもともと師弟関係。これで「女性の声」が五輪に届くのか(AFP=時事)

森喜朗氏と橋本聖子氏はもともと師弟関係。これで「女性の声」が五輪に届くのか(AFP=時事)

 五輪組織委の会長交代劇は海外でも大きく報じられた。日本では「女性会長にしたから一件落着」というムードが多いが、世界の目は厳しい。橋本新会長が森前会長の「子分」であること、かつて自身がセクハラ問題を起こしていたことがすでに問題視されている。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、海外の視点でこの問題がどう見えるのかお伝えする。

 * * *
 東京五輪の森喜朗・組織委員会会長が辞任し、橋本聖子氏が後任に就いたが、それで日本の女性差別が一件落着したわけではない。そうであってはいけない。

 日本のメディア企業に働くある女性はFacebookで、志を同じくする仲間を集めて行動に移したと報告していた。それに対してある有名組織の年配の幹部男性は、森氏の言動を批判しながらも擁護する投稿をした。日本の方々に聞くと、今回の問題に対し、年配の男性のなかにはいまだ多くの擁護論があるようだ。これは国の形に関わる問題だから、森氏の辞任で終わらせてはいけないことだと思う。

 ここニューヨークには、力いっぱい生きて活躍している女性がたくさんいる。小売店や飲食店では女性オーナーの店がどんどん増えていて、特にアジア系を含むマイノリティの躍進がすごい。なかでも目立つのが中国系と韓国系だ。我が家でよく行く日本食レストランは中国人女性が経営している。日本人が中華料理店やイタリアンレストランを経営するのと同じだから、それは何の問題もない。ちゃんとした和食で、とても美味しい。筆者が資金援助して愛用している紳士服のオーダーメイド店は韓国人女性が経営している。もちろん日本人女性も頑張っていて、マンハッタンで4店舗の美容院を経営している方がいる。

 筆者はかつて国連で働いたが、その時の知人らに聞くと、国際機関に応募する日本人女性の数はうなぎ上りだという。単身、日本を飛び出して目指す道を追求している日本人女性たちは、気力充実、仕事には全力で取り組み、責務を全うして夢を追いかけるパワーがすごいと感じる。筆者などまるで及ばない。彼女たちと会うと、自分も負けずに頑張らねば、と勇気をもらえる。実際、アメリカの組織や企業で日本人女性の評価は非常に高い。世界の国々のなかでもトップを争う評価と成果を残していると思う。

 音楽評論家で作詞家の湯川れい子氏とは、ニューヨークでも東京でもたびたび会ってお話をする。エルビス・プレスリーに結婚証明書のサインをもらい、ビートルズ、マイケル・ジャクソンなど伝説の大物アーティストと古くから親交のあった彼女は、世界に飛び出して活躍した日本人女性の草分けの一人と言えるだろう。その湯川氏は、日本の社会を「島国根性で男社会」と表現する。「女性が生きていくために、どれだけの忍従が必要か」と嘆いていた。そしてニューヨークに来ると、こちらで頑張っている日本人女性の友人たちと会うのを楽しみにしている。何人かご紹介いただいたが、のびのびと、生き生きとした女性たちである。その姿と湯川氏の言う「島国根性の男社会」を対比すると、外国で暮らす日本人として複雑な気持ちになる。「よいではないか、彼女たちはここで精一杯生きていくのだ」と自分に言い聞かせるしかない。湯川氏はそんな筆者の気持ちをよくわかってくれるから、友人を紹介してくれたのだと思う。

関連キーワード

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン