典型的な例を3つあげてみたが、どの書き込みにも、大きな事実誤認がある。それは、コロナ禍で木村議員が国会議員として仕事をしていない、という前提だ。実際はそんなことないのである。彼女のツイッター公式アカウントを遡ったり、オフィシャルサイトの「活動レポート」を読んでみたりすればすぐにわかるように、木村議員はむしろ活発な議員活動を行っている。元参議院議員でれいわ新選組に所属している、くしぶち万里氏はこうツイートした。
〈根拠のない風評コメントが一部あるようですが、当選以来、15回の質問で具体的な変化をこんなにもスピード感もって実現された議員はいるでしょうか。心ない言葉の暴力はやめていただきたい〉
バリアフリー社会の実現に向けて、ネット発信しているだけでなく、国会議員の仕事もしっかりこなしているのである。にもかかわらず、仕事をしていないことにされてしまっているのは、木村議員と一緒にれいわ新選組から参議院議員になった舩後靖彦議員が、去年の3月にコロナ感染を防ぐために国会審議を欠席したというニュースのせいだろう。その負のイメージが一部の人たちの頭の中に植えつけられているようなのだ。
舩後議員はALS(筋萎縮性側索硬化症)当事者で、もしコロナに感染したら命にかかわるからいったん欠席したのだが(後にまた出席した)、その際、日本維新の会の音喜多駿参議院議員から、ツイッターで以下の批判を受け、ずいぶん話題になった。
〈れいわの国会議員お二人は、本日も本会議を欠席。致し方のない事情だと存じますが、その分の歳費は返納されないと、国民の納得を得るのは厳しい気も。またこれを契機に、国会も前向きにリモート出席や遠隔採決を検討すべきですね〉
前記した誹謗中傷の事例でも「歳費」について触れられていたが、その源流はおそらく音喜多議員のツイートだ。たとえ、国会を欠席したとしても、それと歳費との関係は法的にないし、未知の疫病の感染拡大時に舩後議員と木村議員が緊急避難でそうしたのは、国民的にも納得の範囲内だと思う。それに、障害者ではない音喜多議員だって、いつどこでどうコロナに感染し、国会を欠席せざるをえなくなるかわからない。何を狭量なことを言う人だろうと感じる。
けれども、こうした「弱者叩き」は、衆目を集め、一部の人たちの攻撃性を発動させるものだ。ネットでの活動に長けている音喜多議員は、ライバルを蹴落とすため意図的に、障害者である舩後議員と木村議員を叩いたのではないかと私は思っている。
今回の木村議員に対する誹謗中傷には、特有の嫌な感じがある。弱者という正義の欺瞞を暴く自分こそ正しい、といった思い込みと、そこに潜む攻撃性だ。
それは、たとえば生活保護の不正受給問題を執拗に取りざたする連中の心性に近い。弱者だからといって優遇されるのはおかしい、我々はもっと厳しい現実社会に生きているのだ、というようなことばかりを強調する歪んだリアリズム。結局のところ、弱者切り捨てを容認する優勝劣敗社会の支持者たちなのだ。要は冷酷なのである。
報道によれば、コロナ感染を発症した木村議員は、いったん上がった熱も下がり、症状は安定しているとのこと。しばらくの安静の後、議員活動を再開したら、こんな冷たい世の中ではあるけれど、引き続き社会的弱者の代弁者として根気強く働いていただきたい。