鮮やかなピンク地にパンダのマークが描かれたフードパンダのバッグ(イメージ、AFP=時事)

鮮やかなピンク地にパンダのマークが描かれたフードパンダのバッグ(イメージ、AFP=時事)

 以上の回答から現状、その会社のバッグを使っているからその配達をしているか公道上ではわからない、ということになる。実際問題として掛け持ちも多いため、いちいち各社のバッグを持つわけにもいかないし、そもそも配達員は業務委託、仲介アプリでしかない各社とも指示を出すわけにもいかないという事情もある。せいぜい規約に書くのが精一杯だろう。それにしても国際色豊か、日本企業のメニュー以外、すべて外資系である。

ウバッグだと煽られたりするから名無し。自己防衛ですよ

「タダでもあのバッグは使わないなあ、名無しで十分だよ」

 別件の取材でさいたま市へ。寒空の中、自転車を押す年配男性に話を聞くと、フードパンダの配達員(正式には配達ライダー)を今年になって始めたという。フードパンダ(Foodpanda)はシンガポール発祥のドイツ系フードデリバリーアプリ。ピンクのバッグがとにかく目立つ。パンダのマークもかわいい。あとバッグがでかい。昨年、大宮で初めて見かけた時はそのインパクトに驚いた(現状、2021年2月の段階で東京には未進出)。

「ピンクにパンダ、おっさんには恥ずかしいよ。名無しで十分」

 名無しというのはロゴなしという意味だろう。フードパンダもまた、先の取材の通り、自社のバッグを推奨しているだけで強制はしていない。

「最初は時給くれるからここにしたんだ。ちょっとした研修も受けたよ」

 フードパンダは登録後に簡単な研修があり、時給補償もある(地域によってはすでに終了)。高齢者には入りやすいのかもしれない。しかしここでも、彼がフードパンダの配達員かどうか、見かけだけではわからないということになる。

 こうしたフリーダムな各国のフードデリバリーアプリに押されているのが旧来型の出前館だ。基本、直接雇用を守ってきたが、2020年8月期の連結決算で営業利益26億2300万円の赤字、9~11月期連結決算でも営業利益31億円の赤字、最終損益が35億円の赤字という結果となった。現在では他社同様、完全歩合制の業務委託として「出前館配達パートナー」を募集している。じつは出前館、昨年から韓国のネイバーとその子会社LINEの傘下になったので、それまでの直接雇用の経営方針から大きく転換を図っている。

 つまるところ、一般の人にはどこの配達員だかまったくわからない状態だ。ある時はウーバー、ある時はメニュー、またある時はパンダ、ネコ、しかしてその実態は ―― なんだかかっこいい感じもするが、これまでの郵便や宅急便の責任を明確にした車両の表示に慣れた日本人からすれば違和感を抱くのも無理はない。とくに自転車の配達員はバイクのようにナンバープレートもない。ロゴすらないバッグだと「ウバッグっぽいバッグを背負った配達員のような何か」状態である。冒頭の女性もそれでわからなかったのかもしれない。

「ウバッグだと煽られたり嫌な目に遭うかもしれないから、自己防衛ですよ」

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