ライフ

安藤優子さん、16年にわたる実母の認知症介護の末に見えたもの

安藤優子アナが母の認知症について語る

安藤優子さんが母の認知症介護について語る

 日本では65歳以上の6人に1人が認知症有病者とされ、今や認知症は「誰もがなりうる病気」と言われている。「認知症の家族の介護」は決して他人事ではなく、心の準備をしておく必要がある。

 ジャーナリスト・安藤優子さん(62)は、『週刊ポストGOLD 認知症と向き合う』の中でインタビューに応じ、ニュースキャスターとして毎日の生放送に出演しながら、認知症になった母・みどりさんの介護に16年間向き合ってきたことについて語った。傷つき、悩んだこともあったが、真摯に向き合い続けた結果、「母の最期は理想的なものだったのかもしれない」と思えるようになったという。

 認知症は、本人にも、家族にも、決して「絶望」ばかりではない。安藤優子さんの介護体験がそれを教えてくれる。

 * * *
 最初に異変を感じたのは今から約20年前、母が70代前半の頃でした。

「ベランダから飛び降りてやる!」

 埼玉にあるマンションの8階で父と2人で暮らしていた母が突如、そう叫んだのです。家族や近所とのトラブルもなく、何の理由も考えられないなか、突然の出来事でした。今思えば、この頃すでに老人性うつが始まっていたのかもしれません。

 それから少し経ったある晩、母は自宅の玄関先で転倒して起き上がれなくなりました。父は母を助け起こせず、彼女は冷たい床に横たわって毛布だけで一晩を過ごしました。翌日、救急隊に救出された母は、近所を騒がせた羞恥心や屈辱感から心に大きな傷を負い、自室に引きこもって私や姉が訪れても口をきかなくなりました。

 それまでの母は明るく社交的で、料理や旅行が大好きでしたが、この一件以降は人が変わったように内に閉じこもるようになりました。私は「あの母はどこに行ったのか」と大きなショックを受け、何が起こったか理解できませんでした。

 さらに母を追い込んだのが父の死です。最初の異変から約5年後のことでした。母の生活を支えていた父が、がんが見つかって半年で亡くなり、ひとり暮らしになった母の認知症の症状は格段に進みました。

 当時の母は要介護認定を受けており、私たちはケアマネジャーやヘルパーの助けを借りながら、兄妹持ち回りで在宅介護をしていました。

 私はキャスターを務める『スーパーニュース』の生放送を金曜日に終えると埼玉のマンションまで車を飛ばし、週末は泊まりがけで世話をして、日曜に自宅に戻ってまた月曜から生放送という生活です。海外出張なども多く、その合間を縫って母のもとに駆けつけ、懸命に掃除をして食事を作っているのに、30秒ごとに「優子、優子」と用もないのに呼びつけられる。つい「ちょっと待ってて!」と声を荒らげることもありました。母の認知症が進むにつれ、こちらにも余裕がなくなっていくんです。

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト