「ミニ戸建て」の仕入れ価格は約600万円
同じようなことは新築の住宅市場でもいえる。
新築マンションの売り出し価格を決めるためには、ある程度の下限がある。つまりは原価。首都圏における新築マンションの建築コストは、1戸当たり2200万円くらいはかかる。日本で最も多くのマンションを建設している某建設会社が得意とする単純な設計の大量生産型でも、1戸当たり2000万円を切れるかどうか、というレベルになる。
つまり、新築マンションは土地がタダ同然でも、首都圏では販売価格が3000万円未満とすることはかなり困難なのだ。
ところが、ミニ戸建ての建築費はそこまでかからない。大手パワービルダーの上物仕入れ価格なら1棟あたり約600万円。信じられないくらいの低価格だ。床面積あたりの土地の値段が同額であれば、当然ながらマンションよりも戸建て住宅のほうが販売価格は安くなる。
マンションよりも戸建てのほうが安い。今、そういうことが大都市圏では起こっているのである。これは20年前なら考えられなかったことである。
だが、新型コロナの感染拡大によって、住宅市場は変わった。テレワークの普及は一般的なサラリーマンにも「自宅で個室」を必要とさせた。
戸建て住宅は、いかにもテレワーク向きである。ミニ戸建てであっても3階の自室でリモート会議に参加すれば2階か1階にいる小さな子どもに邪魔をされることはない。少なくともドアを閉めておけば、一時的には防ぐことができる。こういうニーズによって2020年は、都心周辺でミニ戸建てが爆発的に売れた。