タワマン生活は「憧れ」ではなくなった
注目すべきは、今後もこの流れが定着するかどうかである。
かつてマンションは戸建て住宅が買えない人が消去法で選ぶ住形態であった。ところが最近では「戸建てよりもマンションに住みたい」という価値観が主流になった。特に全国各地でタワーマンションが大量に供給される時代になると、「憧れのタワマン生活」的な発想が一般的になった。
しかし、コロナ禍がこういった流れに変化をもたらしたかもしれない。その証拠に、テレワークが普及し出した2020年の春以降、住宅選択の基準の中で「広さと部屋数」が強く意識される傾向がはっきりと窺える。それを満たすのは、マンションよりも戸建てである。
2019年10月に襲った台風19号は、神奈川県川崎市の武蔵小杉エリアにある1棟のタワマンに浸水被害をもたらした。電気や上下水道が一定期間使えない状態にしてしまったのだ。エレベーターが動かず、トイレが流せないタワマンは生活できない鉄筋コンクリートの箱でしかない。その現実を多くの人に認識させてしまったのである。
実のところタワマンは災害に弱い、というのは偽らざる真実である。人々にはそういう記憶も新しかったのであろう。そしてコロナ禍がやってきた。
さらに、今年は2月13日に発生した福島沖を起点とする地震で、首都圏でも多くのエリアで停電が発生した。エレベーターが一時的に停まったマンションも多かった。マンションの地震への脆弱性を改めて浮き彫りにしてしまったのだ。
コロナ禍が始まって1年以上が経過した。首都圏における戸建てへの需要はいまだ衰える気配を見せない。
今また、マンションから戸建てへの逆回転が始まったのかもしれない。