ここで白鳥お得意の“観客参加型”の演出に。「配信を観ている皆さん、一緒に呪文を!」と呼びかけて視聴者のパワーを結集、波動拳のごとくぶつけると「スゲェぜ、今日の客は……」と言いながら、らくだは地獄へ消えていった。「あんなに顔ボコボコに腫れ上がって、らくださん怒って戻ってきませんか」と心配する屑屋に半次は言う。「大丈夫、ラクダにコブはつきものだ」
1時間超えの長講。「配信だと目の前の客のウケを狙わず作品に集中できる」という白鳥の迫真の演技はまさに“魔王が降臨した”よう。一期一会の熱演だった。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年4月9日号