スポーツ

「一族の無念」と「三冠馬の血脈」が激突する桜花賞の狙い方

舞台は阪神競馬場

舞台は阪神競馬場

 いよいよ春のクラシック開幕である。競馬ライターの東田和美氏が分析した。

 * * *
 昨年「桜花賞には母の無念を娘や孫が晴らしてきた歴史がある」と書いた。両親それぞれの母がともに桜花賞に参戦、好走しながら女王になり損ねていたのがデアリングタクトだった。

 今年の1番人気はジュベナイルフィリーズで白毛初のGⅠ馬となった4戦4勝のソダシ。母ブチコは白毛といってもその名の通りブチ模様の人気者。パドックで引く担当者もブチのシャツを着て登場していたものだ。芝で勝ち切れなかったものの、明け3歳になってからダートを連勝。武豊騎乗でトライアルのチューリップ賞に挑んだ。桜花賞馬となるレッツゴードンキの2番手につける見せ場たっぷりのレースだったが、直線で力尽き14着。以後はダートが主戦場になった。

 ただし、桜花賞は牝馬に生まれたからには誰もが目指す舞台。血統馬ならこの程度の“挫折”は珍しくない。

 桜花賞に対する無念の思いが最も強いのは、ホウオウイクセルの一族だろう。祖母は1998、1999年のエリザベス女王杯連覇などGⅠ5勝のメジロドーベル。デビュー3年目の吉田豊にGⅠタイトルをもたらした21戦10勝という名牝だ。阪神3歳牝馬Sを勝って最優秀3歳牝馬(当時)に選出され、4歳(現3歳)時にはオークスと秋華賞は勝ったが、桜花賞ではキョウエイマーチの2着に敗れた。

 メジロの女傑といえば3冠牝馬メジロラモーヌだが、繁殖牝馬としての成績は今一つだった。シンボリルドルフとの“10冠ベビー”も1戦のみで引退したが、ひ孫の代になって2頭のGⅠ馬を出している。

 メジロドーベルも、母としてディープインパクトとの配合による“12冠ベビー”などが話題を集めたが、産駒に目立った活躍馬は出なかった。しかし孫の代になってショウナンラグーンが青葉賞を勝ちダービーにも出走。この血統を大事にしてきた生産者に敬意を表するとともに、血統の持つ奥深さを感じないではいられない。

 メジロドーベル5番目の娘メジロオードリーは、母と同じ大久保洋吉厩舎&吉田豊騎手でデビュー。皐月賞にまで駒を進めたダイワファルコンなどを相手に新馬勝ち。重賞フェアリーSでも僅差の4着だったが桜花賞への出走はかなわなかった。ホウオウイクセルはメジロオードリーの第5子。兄姉4頭は未勝利だが、父がルーラーシップになったとたん2戦目で勝ち上がった。その母エアグルーヴとメジロドーベルの邂逅の産物というのは言い過ぎだろうか。

 エアグルーヴはメジロドーベルの1歳上だが、現役時代に6回も同じレースを走ったいわば戦友。戦績はエアグルーヴの4勝2敗だが、6回のうち4回はともに掲示板に馬番を点灯させている。エアグルーヴはチューリップ賞を5馬身差で圧勝しながら、桜花賞を熱発で無念の回避。ついでにいえばエアグルーヴの母ダイナカールも桜花賞は1番人気で3着だった。

 両親それぞれの母がライバルだったというのはデアリングタクトと同じ。これを単なる偶然と言ってしまえばそれまで。「一族」といっても実体はなく、背負っている無念が強いから勝てるというわけでもない。

 しかしホウオウイクセルは前走フラワーカップでは先行して直線で抜け出すレースで完勝。前々走中山マイルのフェアリーSでも8枠ながら徐々にポジションを上げ、8番人気ながら2着を確保した。戦ってきた相手がどうかだが、4戦すべて多頭数を捌ききっており、まだまだ伸びしろはある。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン