普通の恋愛よりも、婚活はスペックにシビアになる
破局後は再び仕事や趣味に打ち込み、彼女がいなくても日々は充実していた。職場は男女問わず和気あいあいと仲のいい環境で、むしろ恋愛沙汰からは遠かったとも振り返る。それが、40歳をすぎて心境の変化があったのは前述したとおりだ。
そうして始めた婚活で、思いがけず、モテを経験する。その理由について、夏樹さんは冷静に分析している。
「プロの意見を聞きたいと思って、今、アドバイザーの就く相談所に登録しているんですが、僕がモテる理由は身もふたもなく、年収だと言われました。あと、40歳を超えると、独身よりも、バツイチがモテることがあるとも。子供がいないことが条件のようですが、40を超えるまでずっと独身の男性って何か問題があるって思われるそうです。女性のほうはどうなのって思いますがね」
婚活市場において重要なのは、男性は「年収」と「会社名(職業)」、女性は「年齢」と「顔」──この基準を聞くとなんて前近代的! と思われるかもしれない。だが、今のところ、これが“現実”だと、夏樹さんはベテラン婚活アドバイザーに教えられたという。
「といっても、それは“入り口”で、付き合い始めたら気が合うかとか、価値観が合うかとかが大事だと思うんですが、入り口の扉を開けないことには始まらないわけで、そういう意味では、婚活って、普通の恋愛以上にスペックにシビアですよね。始めてみて実感しました。年齢とか年収とか見た目とかで人を差別してはいけないというのが今の社会の価値観だけど、婚活というプライベートな空間になると、とたんに逆になるっていうのが、不思議と言えば不思議だし、そこは個人の好みなので、社会的な価値観とはまた別なんでしょうね」
夏樹さんはアプローチをもらった複数の女性の中から、数人とメールのやりとりを重ね、オンラインや、緊急事態宣言が解除されている時期には、実際に会ったりもした。アドバイザーの意見を聴きながら、半年ほどかけて、本気で付き合いと思う女性を二人に絞ったという。一人は同世代の建築家。もう一人は、8歳年下の美容師だった。