1994年、阿部寛は『大阪極道戦争』と主演作『凶銃ルガーP08』での演技が認められ、第4回日本映画プロフェッショナル大賞の特別賞を受賞している。1990年代後半にかけては演じる役柄の幅も広がり、NHK大河ドラマ『八代将軍吉宗』など時代劇でも活躍するようになっていった。
さらに2000年代に入ると、女優の仲間由紀恵とコンビを組んだドラマ『トリック』(テレビ朝日系)がヒット。自身のモデル時代の写真を自虐ネタとして劇中で使用するほか、体は大きいものの肝っ玉の小さい理系の学者という三枚目の役柄を見事に演じ切り、2014年にシリーズが完結するまで好評を博した。
そんな阿部寛が俳優として業界からも一目置かれる存在となったのは2008年のことだったと寺脇氏は言う。
「『トリック』で有名になった阿部寛さんが、日本を代表する俳優として業界の中でも認められるようになったのは2008年。『青い鳥』と『歩いても歩いても』で毎日映画コンクールの男優主演賞を受賞したときでした。映画業界ではキネマ旬報ベスト・テンと並ぶ価値ある賞です。
特に『青い鳥』での演技が評価されたことは大きい。『歩いても歩いても』は樹木希林や原田芳雄など名優が多数出演していましたが、阿部さんが中学校の教師役を務めた『青い鳥』では、主な共演者は中学生役の子供たちでした。つまり、阿部寛という俳優が一本の映画を成立させる力を持っている、ということがハッキリとわかったのがこの作品だったんです」
2005年に放送された『ドラゴン桜』から16年。続編では“日本を代表する俳優”へと成長を遂げた阿部寛が主演を務めることになる。寺脇氏は続ける。
「『青い鳥』で賞を獲ってから、阿部寛さんは円熟味が出て演技に深みが増していきます。『ドラゴン桜』の続編でも、16年前の第1シリーズとは異なる円熟した魅力を発揮するでしょう。原作の漫画の中でも時間が経過していますが、それをどう阿部寛さんが演じるのか見ものです」
『ドラゴン桜』で阿部寛は高校生に受験指導を行う元暴走族の弁護士役を演じている。教師役を務めた『青い鳥』で見事な演技を披露したように、『ドラゴン桜』でも阿部寛という才能が作品を牽引することは間違いなさそうだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)