そして没後20年の今年4月29日、「古今亭右朝4」(2枚組)が発売された。演目は『夢金』『崇徳院』『替り目』『幾代餅』『一分茶番』『首屋』で、すべて「日本演芸若手研精会」(二ツ目によるレギュラー制の月例会)での音源。『夢金』と『幾代餅』は1989年1月に特別公演として開かれた「古今亭右朝独演会」での高座で、他4席は昇進前のもの。中で『首屋』は時間が押していたためトリでありながら10分で高座を終えたときのもので、貴重な録音だ。
これら4タイトルはすべて購入可。「古今亭右朝という落語家がいた」ことをリアルタイムで知らなかった世代の右朝ファンが、このシリーズによって少しずつ増えているらしい。素晴らしいことではないか。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年6月4日号