スポーツ

右足切断の谷津嘉章 プロレス技も可能なAI駆使の特注義足でリングへ

「秘密兵器」となる義足の開発には、実に2年

「秘密兵器」となる義足の開発には、実に2年を要した

 6月6日、さいたまスーパーアリーナで開かれるプロレスイベント「CyberFight Festival 2021」(DDT、ノアほか4団体の合同興行)で、プロレスラー・谷津嘉章(64)が「義足」を装着してリングに上がる。激しい動きを伴うプロレスに耐えられる義足とはどのようなものか、どういったトレーニング必要になるのか、そして、なぜそこまでしてリングに上がろうとするのか――。

 * * *
 さかのぼること40年前の1981年6月24日、華々しい国内デビューを果たしたのが、当時24歳の谷津嘉章だ。

 この日、「新日本プロレス創立10周年記念大会」(蔵前国技館)でエース・アントニオ猪木のタッグパートナーに指名され、メインに登場した。モスクワ五輪(1980年)のレスリング日本代表選手としてメダル獲得を期待されながら、まさかのボイコットに泣いた谷津は、アマレス指導者の道を捨て、プロレス入りを選択した。

 あれから長い月日が流れた。24歳だった青年はいくつかのプロレス団体を渡り歩き、64歳となった。谷津の格闘人生を支えた右足は、もうない。2年前の2019年6月、糖尿病の悪化により右足を膝下から切断する手術を余儀なくされた。

 今年3月、栃木県・足利市で東京五輪の聖火ランナーをつとめた谷津は、6月6日のさいたまスーパーアリーナ大会のバトルロイヤルに参戦が決定。障害者となった谷津はいま、世界初の「義足レスラー」として再びリングに立とうとしている。

 大会を直前に控えた6月上旬、谷津の姿は生まれ故郷の群馬県・邑楽郡にある小さなプロレス道場にあった。

 足利工業大学附属高校(現・足利大学附属高校)の同級生で、地元で「イーグルプロレス」を主宰する島田宏(64)をトレーニングパートナーに指名。感触を確かめるようにゆっくりとエプロンに上がった谷津の右足には「本番用」の格闘技専用義足が装着されていた。

「開発に足掛け2年、かかったんですよ。世界にひとつだけの義足です」

 脚の断端を収納するソケットを調整しながらそう語るのは谷津本人である。

「大阪の川村義肢という義肢装具業界の大手企業が、特別に開発してくれました。自分の身長体重や、実際にプロレス技をかけるために必要な負荷をAIで研究分析して、プロレスに必要な“ひねる”動作を可能にしたのが特徴です。これがあれば、プロレスだけじゃなくて、ゴルフなんかもできるようになりますよ」

 質感のある義足は、最新技術の結晶だ。接地部分のソールは意外に面積が小さく、プロレスのリングではそのまま「凶器」となることうけあいだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン