ライフ

8人に1人が罹患する腎臓病「座りすぎ」が発症リスクを高める可能性も

(写真/アフロ)

巣ごもり生活が、腎臓病の発症リスクを上昇させる?(写真/アフロ)

 新型コロナウイルス感染リスクを避けるため、家で椅子に座ってテレワーク。しっかりたんぱく質を摂って、頭痛や生理痛には薬を一錠──。こんな「普通の生活」が腎臓に負担をかけているかもしれない。“沈黙の臓器”腎臓の声を聞く方法を徹底取材。

 8人に1人……これは日本における「慢性腎臓病」の罹患者数だ。この数は生活習慣病の代表格であり、「国民病」といわれて久しい糖尿病よりも多い。筑波大学腎臓内科学教授の山縣邦弘さんが言う。

「2005年には1330万人だった国内の罹患者は、2015年に私たちが調査したところ、1480万人に増加していました。その数はいまも右肩上がりであることが予想されます」

 実際、医学雑誌『ランセット』の2020年の報告によれば現在の患者数は2100万人だともいわれている。山縣さんはその最大の原因は高齢化にあるという。

「腎臓は血液を濾過して老廃物を体外に排出する働きをする、生命の維持に欠かせない臓器です。しかしその働きは加齢とともに徐々に衰えていきます。慢性腎臓病は機能が正常の6割以下に低下している、またはたんぱく尿が出るなどの腎障害が3か月以上持続した状態をいいます。

 罹患率は50代から増え始め、60代では15%、70代では30%、80代に至ると約半数が当てはまります。つまり、年を重ねることそのものが発症リスクを上げるのです」(山縣さん)

 この傾向に拍車をかけるのが、コロナ禍における巣ごもり生活だ。

 大阪大学の研究グループが2006年から12年にわたって行った追跡調査によれば、デスクワークが多い業務体系の人はそうでない人よりも腎臓病の症状の1つである「たんぱく尿」が出るリスクが1.35倍高かった。

「実際、筑波大学に通院する慢性腎臓病患者の1日の活動量を調査したところ、座っている時間が37%で最も多く、次いでベッドなどで眠っている時間を指す臥床時間が34%。1日の最も長い時間を座って過ごしていました。有酸素運動のような、体に負荷がかかる動きに至っては4%で、1日1時間にも満たなかった。

 もちろん体調が悪いゆえに座っている時間が長い人もいましたが、“座りすぎ”が発症リスクを上げることは間違いありません」(山縣さん)

 大手健康機器メーカー・オムロン ヘルスケアが行った調査によれば、コロナ禍で座っている時間が増えたと実感する人は多く、今後、罹患者数はさらに増えることが予想される。

“座りすぎ”に注意(写真/Getty Images)

“座りすぎ”に注意(写真/Getty Images)

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン