納采の儀に際して、黒田家の使者として皇居を訪問した直志さん(左、写真/宮内庁提供)
「立教大学を卒業後は博報堂に進み、アジア局長を務め、マレーシアなどへの赴任も経験しています。これだけの経歴、そして親族の持ち主ですから、平時なら、かなりの大規模な葬儀が営まれていたはずです」(前出・皇室ジャーナリスト)
しかし、コロナ禍のいま、これまでごく普通にできていたことが当たり前ではなくなり、葬儀のあり方や理想の逝き方に変化が見られている。病が進んでも、亡くなったとしても家族以外には知らせず、限られた者たちでひっそりと家族葬を行う──そうした選択をする人が増えているのだ。
「コロナ禍で家族を亡くしたほとんどの人が、ごく限られた人にしか危篤や訃報を知らせないという選択をしています。また、多くの遺族が家族葬を選んでいます。これは、生前の交友関係や社会的地位を問わない傾向です。社葬のようなものは執り行われないのが今後のスタンダードになるのかもしれません」(葬儀業界関係者)
たしかに、訃報や葬儀を行うことを大々的に知らせなければ、故人の知人らはリスクを冒して出かけることなく遠方で静かに偲ぶことができる。また、普段なら「なぜ教えてくれなかったのか」という声があがりそうなものだが、いまは「コロナだから仕方ない」と納得できる。
清子さんと慶樹さんが、父親代わりを務めた直志さんの葬儀に参列しなかったのは、こうした状況下では、たとえ皇室関係者であっても例外ではないという強い自制の意識があったのだろう。
この日、直志さんの葬儀会場に、特別な警備態勢は敷かれていなかった。十数人の参列者は、車や徒歩で式場に向かい、言葉少なに直志さんを送り出す。そこには、清子さんと慶樹さんの気持ちも届いていたに違いない。
※女性セブン2021年6月24日号