ライフ

日本民藝館【2】壇蜜「ひとりの美意識が美術史を書き替えた」と感動

『つきしま(築島物語絵巻)』2巻のうち下巻 室町時代・16世紀

『つきしま(築島物語絵巻)』2巻のうち下巻 室町時代・16世紀

 日本美術応援団団長である美術史家・明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は東京都・目黒区の日本民藝館の第2回。2人が民衆の手工芸品の数々を見て回る。

壇蜜:『貝尽し文様夜着』は色んな形の貝がのびのびと描かれ、目を引きます。

山下:二枚貝の蛤は夫婦和合の象徴です。昔は貝合わせが嫁入り道具とされ、江戸時代のこの夜着も特別なものだったと思われます。

壇蜜:夜着の柄から市井の文化や風習が窺えますね。

山下:日常にある実用の手工芸品の中に“美”を見出し、民衆の工芸=「民藝」なる新しい美の概念を打ち出したのが、柳宗悦。日本民藝館は柳のコレクションや美学を共有する場として設立され、日本各地の染織品も多く所蔵しています。

壇蜜:民藝という言葉がまさか造語だったとは。ひとりの人間の美意識が美術史を書き替えたのですね。

山下:「民画」も柳による造語です。民俗絵画の大津絵や民間に流布した仏教版画など、柳は大量生産の工芸的絵画に宿る素朴な美も愛しました。

 平清盛が大輪田泊を造成した際に人柱を立てたという伝説に基づいた『つきしま(築島物語絵巻)』に描かれた絵も、なんと清潔な美しさだろう。

壇蜜:へんに俗っぽくなくてイノセントな美しさがある。悲しいお話なのにどこかかわいらしくもあり、とてもわかりやすい絵です。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長。

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊)。

●日本民藝館
【開館時間】10時~17時(最終入館は閉館30分前まで)
【休館日】月曜(祝日の場合は開館し、翌平日が休館)、年末年始、その他臨時休館あり/西館(旧柳宗悦邸)公開日会期中の第2水曜・土曜、第3水曜・土曜(10時~16時半、最終入館は閉館30分前まで)
【入館料】一般1200円
【住所】東京都目黒区駒場4-3-33 ※開館情報はHPにて要確認

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也

※週刊ポスト2021年6月18・25日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

6月6日から公開されている映画『国宝』(インスタグラムより)
【吉沢亮の演技が絶賛】歌舞伎映画『国宝』はなぜ東宝の配給なのか 松竹は「回答する立場にはございません」としつつ、「盛況となりますよう期待しております」と異例の回答
NEWSポストセブン
さいたま市大宮区のマンション内で人骨が見つかった
《さいたま市頭蓋骨殺人》「マンションに警官や鑑識が出入りして…」頭蓋骨7年間保管の齋藤純容疑者の自宅で起きた“ある異変”「遺体を捨てたゴミ捨て場はすごく目立つ場所」
NEWSポストセブン
大谷翔平の投手復帰が待ち望まれている状況だが…
大谷翔平「二刀流復活でもドジャースV逸」の悲劇を防ぐカギは“7月末トレード” 最悪のシナリオは「中途半端な形で二刀流本格復活」
週刊ポスト
フランスが誇る国民的俳優だったジェラール・ドパルデュー被告(EPA=時事)
「おい、俺の大きな日傘に触ってみろ」仏・国民的俳優ジェラール・ドパルデュー被告の“卑猥な言葉、痴漢、強姦…”を女性20人以上が告発《裁判で禁錮1年6か月の判決》
NEWSポストセブン
ホームランを放った後に、“デコルテポーズ”をキメる大谷(写真/AFLO)
《ベンチでおもむろにパシャパシャ》大谷翔平が試合中に使う美容液は1本1万7000円 パフォーマンス向上のために始めた肌ケア…今ではきめ細かい美肌が代名詞に
女性セブン
ブラジルへの公式訪問を終えた佳子さま(時事通信フォト)
《ブラジルでは“暗黙の了解”が通じず…》佳子さまの“ブルーの個性派バッグ3690レアル”をご使用、現地ブランドがSNSで嬉々として連続発信
NEWSポストセブン
告発文に掲載されていたBさんの写真。はだけた胸元には社員証がはっきりと写っていた
「深夜に観光名所で露出…」地方メディアを揺るがす「幹部のわいせつ告発文」騒動、当事者はすでに退職 直撃に明かした“事情”
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
「生肉からの混入はあり得ないとの回答を得た」“ウジ虫混入ラーメン”騒動、来来亭が調査結果を公表…虫の特定には至らず
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:2月6日、懲役刑を言い渡された時の水原被告(左:AFLO、右:時事通信)
《3度目の正直「ついに収監」》水原一平被告と最愛の妻はすでに別居状態か〈私の夢は彼と小さな結婚式を挙げること〉 ペットとの面会に米連邦刑務局は「ノー!ノー!ノー!」
NEWSポストセブン
“超ミニ丈”のテニスウェア姿を披露した園田選手(本人インスタグラムより)
《けしからん恵体で注目》プロテニス選手・園田彩乃「ほしい物リスト」に並ぶ生々しい高単価商品の数々…初のファンミ価格は強気のお値段
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン