過当競争の新業態でワタミは勝てるのか

 問題は、新業態もまたレッドオーシャンであることだ。この1年間でから揚げ専門店が次々と誕生している。さらにはガストなどファミリーレストランもから揚げに力を入れ始めた。今はまだ市場が伸び続けているからいいが、いずれ頭打ちになる。

 また焼肉店も、コロナ禍でも業績が堅調なことから、出店が増えている。ダイニングイノベーショングループが展開する「焼肉ライク」のように一人焼肉市場を開拓するところも出てきている。早晩過当競争になるのは間違いない。

コロナ禍を経て渡邉美樹氏の挑戦は続く(時事通信フォト)

コロナ禍を経て渡邉美樹氏の挑戦は続く(時事通信フォト)

 どうすればそこで勝つことができるのか──。渡邉会長は「これからは経営力が問われる。われわれには仕入れ力がある。そこに生産性が加われば高い付加価値が提供できる。それができれば生き残っていける」と語る。

 実際「焼肉の和民」では配膳ロボットを導入するなど、生産性を高める取り組みが行われている。このほか、店舗、営業所、物流、工場、農場、本部の工程を見直しており、前期1年で工場の生産性は9.6ポイント改善されたという。このような不断の努力を続けていくことが、競争激しい外食産業で生き残る唯一無二の方法だ。

 かつて「青年社長」といわれ日本の居酒屋業界を牽引してきた渡邉会長もすでに61歳。還暦すぎての挑戦が続く。

●文/関慎夫(雑誌『経済界』編集局長)

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