コロナ禍で加速するワタミの業態転換
もうひとつワタミが力を入れているのが、「から揚げの天才」の大量出店だ。これはテリー伊藤とコラボして2019年11月に1号店をオープンした新規業態だが、コロナ禍のテイクアウト需要を取り込もうと、前期1年間で85店を出店、3月末の店舗数は92店となった。
「以前から居酒屋業態を変えていかなければならないと考えていた。コロナ禍によりその思いはさらに強くなり、2、3年かけて変えていけばいいかと考えていたものを1年でやろうと考えを改めた」(渡邉会長/『経済界』3月号のインタビューより)
オーナー企業だからこそできた決断
渡邉氏は「つぼ八」のFC店オーナーとして居酒屋業界に参入を果たし、1992年に和民1号店を開業、瞬く間に店舗を増やし、居酒屋チェーンとして日本のトップに立った。ある意味、日本の居酒屋をつくってきた男だ。
2013年の参院選で当選し1期6年務めた時は経営から離れていたが、任期満了後にワタミに復帰し、2019年10月に会長兼グループCEOとなった。いわば復帰後の最初の仕事がコロナ禍対応であり、その中身は自ら創ってきた居酒屋業の否定だった。その意味で、この業態転換は創業者でオーナーだからこそ決断できたことかもしれない。
今期も、ワタミは新業態店の開店を加速する。とくに「からあげの天才」は、FC展開により1年間で200店の開店を目指す。こうした施策を財務面から支えるため、日本政策投資銀行から120億円を資金調達することも決まっている。