ビジネス

伊豆や箱根の高級旅館 コロナ後を見越した中国人投資家が買い漁っている

中国人投資家が国内宿泊施設の売買に…(写真/共同通信社)

中国人投資家が国内宿泊施設の売買に…(写真/共同通信社)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響でインバウンドは喪失し、国内の観光客も激減している。昨年の箱根の観光客数は、前年比33%減の1257万人で過去最低となった(神奈川県箱根町調べ)。

 この箱根で、経営難に陥った宿泊施設に食指を動かすのが、中国人投資家である。宿泊施設の売買を仲介する「ホテル旅館経営研究所」には、問い合わせが増加している。

「コロナ禍で外国人から問い合わせが増加していますが、多くは中国人からのものです。今年1月は前年の2倍以上の260件ほど、5月も200件以上の問い合わせがきています。問い合わせの7割を占めるのが、伊豆や箱根、富士山周辺の高級旅館です」(辻右資所長)

 これらの高級旅館はコロナ前と比べて、売買価格が3割前後安くなっている。コロナ後のリバウンド需要を見越して、安くなった日本の観光地が「買い」だと、中国人投資家がこぞって狙っているという。

「コロナ以前は中国からの団体客を狙った大型ホテルが人気でしたが、今は1泊5万円を超える高級旅館が人気です。日本人を含めた世界の富裕層がコロナ収束後に日本を訪れることを想定しているようです。最近も中国人投資家が、伊豆の修善寺にある庭園付きの高級旅館を購入しました」(前出・辻氏)

 すでに中国人投資家による土地や不動産の大規模売買は表面化している。

 2018年に中国の投資会社「蛮子投資集団」が、京都で120件もの不動産を買収した。同社は、町家が並ぶ一角を丸ごと買収して「蛮子花間小路」という名前で再開発する計画を立てている。京都の町並みにチャイナタウンが生まれることになる。

 今国会に提出されている土地規制法案の対象は重要な施設の周辺に限られるが、法案を推進する青山繁晴・参院議員(自民党)は、中国人投資家に観光地が買われていくことに懸念を表わす。

「観光地は中国人観光客による経済効果をお考えと思いますが、野放しに一つの地域を集中して外国に買われてしまうのは、地元の利益にも安全保障上も問題です。法の施行後は各自治体と相談しつつ、場合によっては土地の利用調査や売買に事前届け出が必要な区域に指定することも考えられます」

※週刊ポスト2021年7月2日号

京都市内(時事通信フォト)

京都市内(時事通信フォト)

関連キーワード

関連記事

トピックス

11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(右/読者提供)
【足立区11人死傷】「ドーンという音で3メートル吹き飛んだ」“ブレーキ痕なき事故”の生々しい目撃談、28歳被害女性は「とても、とても親切な人だった」と同居人語る
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《中国とASEAN諸国との関係に楔を打つ第一歩》愛子さま、初の海外公務「ラオス訪問」に秘められていた外交戦略
週刊ポスト
グラビア界の「きれいなお姉さん」として確固たる地位を固めた斉藤里奈
「グラビアに抵抗あり」でも初挑戦で「現場の熱量に驚愕」 元ミスマガ・斉藤里奈が努力でつかんだ「声のお仕事」
NEWSポストセブン
「アスレジャー」の服装でディズニーワールドを訪れた女性が物議に(時事通信フォト、TikTokより)
《米・ディズニーではトラブルに》公共の場で“タイトなレギンス”を普段使いする女性に賛否…“なぜ局部の形が丸見えな服を着るのか” 米セレブを中心にトレンド化する「アスレジャー」とは
NEWSポストセブン
日本体育大学は2026年正月2日・3日に78年連続78回目の箱根駅伝を走る(写真は2025年正月の復路ゴール。撮影/黒石あみ<小学館>)
箱根駅伝「78年連続」本戦出場を決めた日体大の“黄金期”を支えた名ランナー「大塚正美伝説」〈1〉「ちくしょう」と思った8区の区間記録は15年間破られなかった
週刊ポスト
「高市答弁」に関する大新聞の報じ方に疑問の声が噴出(時事通信フォト)
《消された「認定なら武力行使も」の文字》朝日新聞が高市首相答弁報道を“しれっと修正”疑惑 日中問題の火種になっても訂正記事を出さない姿勢に疑問噴出
週刊ポスト
地元コーヒーイベントで伊東市前市長・田久保真紀氏は何をしていたのか(時事通信フォト)
《シークレットゲストとして登場》伊東市前市長・田久保真紀氏、市長選出馬表明直後に地元コーヒーイベントで「田久保まきオリジナルブレンド」を“手売り”の思惑
週刊ポスト
ラオスへの公式訪問を終えた愛子さま(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
《愛子さまがラオスを訪問》熱心なご準備の成果が発揮された、国家主席への“とっさの回答” 自然体で飾らぬ姿は現地の人々の感動を呼んだ 
女性セブン
26日午後、香港の高層集合住宅で火災が発生した(時事通信フォト)
《日本のタワマンは大丈夫か?》香港・高層マンション大規模火災で80人超が死亡、住民からあがっていた「タバコの不始末」懸念する声【日本での発生リスクを専門家が解説】
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 習近平をつけ上がらせた「12人の媚中政治家」ほか
NEWSポストセブン