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術後は早めに日常生活に戻る方が回復は早まるとされる(写真/GettyImages)

「手術に伴う長期の入院も“無駄”の筆頭とされます。実際に、術後は早めに体を動かし、日常生活に戻った方が回復が早いという調査結果もある。また、“画像検査で胆石が見つかっても、無症状ならば手術はしない”がスタンダードになりつつあるなど、過剰医療に対しては厳しい目が向けられるようになっています」(室井さん)

 手術と並んで「無駄」が生じやすいのは、約1000万人もの患者がいるといわれる高血圧や、同220万人の脂質異常症など生活習慣病の治療だ。新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんが解説する。

「高血圧と診断されると、血圧を下げるための降圧剤を処方されることがほとんどですが、ふらつきやめまいなど副作用の方が強いうえ、服薬してもしなくてもその後の寿命はあまり変わらないという研究もある。高コレステロールの人も同様で、特効薬がもてはやされた時期もありましたが、いまはその治験データの信頼性が失われており、重い副作用の報告も出てきている。また、むしろ高コレステロールの人の方が長生きだというデータもあり、治療をしない方がいい場合も少なくないと考えられます」

腰痛手術は3か月待つべし

 自宅の机やいすでのテレワークや、座りっぱなしのステイホームにより腰痛や関節痛に悩む人は増加傾向だ。しかしその痛みを軽減するための治療も、時と場合によっては“無駄な医療”になりかねない。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんが指摘する。

「患者の中にも腰の手術を何度もやっているのに、よくならないという人は少なくありません。MRIを撮って『ここを治せばよくなる』と言われて手術したにもかかわらず痛みが治まらず、何回も部位を変えて手術しているのです。結局、これらの手術はすべて意味がない。多くの腰痛の場合、慌てて手術せずに3か月くらいは経過観察をして、それでも改善しなければ手術に踏み切った方がいい」

 なぜ急いで手術してはいけないのか。戸田さんが続ける。

「たとえば坐骨神経痛なら3か月経てば自然治癒することが多い。骨と骨との間のクッションが飛び出して神経を刺激する椎間板ヘルニアも、体が異物だと認識して3か月くらい経つと自然に縮小するケースもあるためです」

 戸田さんによれば、腰痛手術の中でも特に注意すべきものがあるという。

「それは年齢の変化で背骨が曲がる変形性腰椎症にも最近はすすめられるようになった『脊椎インストゥルメンテーション手術』です。背骨に釘(スクリュー)を打って金属の棒を入れ、まっすぐにする手術なのですが、1本数万円もするスクリューを20本ほど使う大がかりで高額なものです。高額医療還付制度が適用されるとはいえ、腰を伸ばすための手術に高額な社会保険料を投入することに、ぼくは疑問を感じます」

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