巨大掲示板「2ちゃんねる」管理人だった西村博之氏。現在はフランス在住(時事通信フォト)

巨大掲示板「2ちゃんねる」管理人だった西村博之氏。現在はフランス在住(時事通信フォト)

 長編小説『ジャン・クリストフ』(主人公のクリストフはドイツ人)はフランス人とパリの悪口のオンパレードだが作者のロマン・ロランはフランス人でフランスを愛する文豪だった。エミール・ゾラもシャルル・ボードレールそうだった。愛するがゆえの屈折――フランス人、一筋縄ではいかない。ちなみにフランス人の若者が日本のアニメや漫画、ゲーム好きというのはどうなのか、そういった文化は若者世代だけで、まだ浸透していないのか。

「そういう人たちは彼ら(デンベレやグリーズマン)とは真逆の人たち、オタクだね。普通に英語のナーズ(※nerds、スポーツが苦手で社交性に欠ける人たち)で通じるよ。ジャポニズムはフランスの一部に熱心なファンがいるけど、あくまで一部だね。真に受けて、いい年した大人がアニメの話なんかしないほうがいいかな。他国に対するリスペクトって本音のところはないからね、なんでもフランスが一番、遊びは別ってだけ」

謝ると死んじゃう

 なんでもフランスが一番、これは筆者も聞き及んだころがある。中華思想のようなものだが、実際に強大な中国と比べて滑稽に見えてしまう。近隣諸国からも評判が悪い。しかし今回は言い訳に終始するデンベレはともかくグリーズマンは謝った。

「いや、日本人には謝ってないでしょう。繰り返すけど謝ってるように見えても日本人の謝るとは違うよ。絶対に不利になるようなことはしないし、真正面に捉えない」

 グリーズマンはバルセロナFCのメインスポンサー、楽天の三木谷浩史会長に直接謝罪した。楽天がクラブに正式抗議したことを受けての謝罪だが、日本人に対しても「日本の友人たちを怒らせたなら申し訳ない」と非を認めているわけではない、ということか。それにしても、謝ると死んじゃう病気なのだろうか。先生は筆者の言葉に笑った。

「そうだね、謝ると死んじゃう。精神の死って意味ではそうかな、それにやっぱり東洋人は下だよね。これは間違いない。もう理屈じゃなくて通念上、東洋人は猿で下」

 スポンサーの三木谷会長には謝るが、日本の友人たちは怒らせた「なら」申し訳ないわけで、やっぱり日本人そのものには謝っていない。そもそも当のスタッフに対する謝罪もなってない。猿に謝るのはフランス人のプライドが許さないということか。

「日本人は大人しいし、英語圏で発言する人も少ないから好き放題言われる。昔はもっと酷かった」

 白人社会のカラードに対する差別は今に始まったことではないが、先生によればフランスなどまだマシで、東欧の旧共産圏の白人国家は近寄らないほうがいいと言い切る。確かに、サッカーの話で言えば旧ユーゴスラビアのセルビアでは浅野拓磨選手が給料未払いの上に脅された。クロアチアの浦田樹選手はウクライナでの経験を踏まえ「正直言って、話が通じないレベル」と言っている。かつては中村祐輝選手がスロバキアで人種差別的行為を繰り返されて生活ができなくなり帰国した。

「その辺の国は冷戦終わったって、いまの50代から上は共産政権時代の教育と社会しか知らないからね」

 あとはフランスとは話が逸れてしまったためにここまでとするが、先生の言いたいことは「これからは日本人も差別されたら怒るべし」だという。

「昔は白人に言われたら黙るか笑うかなんて日本人も多かったんだよ。日本じゃ威張ってる大学の先生や文化人も白人に媚びへつらって、私も言えた義理じゃなかった。もうそんな時代じゃないし、これからの日本人はそんなことじゃいけない」

 これは白人にだけではなく、黒人に対してもそうだという。

「大学にはさ、黒人には文句を言っちゃいけないなんて先生もいたんだよ。日本人の学生と同じように黒人を叱ると差別だって問題にする先生もいた。相手が間違ってたら白人も黒人も関係ない。人種や肌の色じゃなく人間同士の話なのに、日本人は外国人となると弱いんだ。リベラルってそういうことじゃないのにね」

関連キーワード

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン