「オフレコ取材」が発端
「こうした発言の多くは、政治家や官僚などが各社の記者とざっくばらんに質疑応答を行う『懇談会』や、出勤前や帰宅後の関係者宅を記者が回って話を聞く『夜討ち朝駆け』などのオフレコ取材で得られたものです。また最近はコロナで懇談会や夜討ち朝駆けが激減して、記者が携帯電話で直接関係者から話を聞くケースが増えています。
オフレコ取材は発言者の名前を出すことができず、メディアは『政府高官』、『政府関係者』などから聞いた話として報じます。ただしオフレコのなかでも『完オフ』の場合は発言をすぐに報じてはダメで、時間が経ってから検証記事などで匿名の発言として報じることができます。さらに完オフのなかには内容を一切報じることができず、未来永劫内緒にしなければならないものもあります」
オフレコ取材は原則としてメモや録音が許されず、終了後に記者が集まって互いの記憶を刷り合わせる「メモ合わせ」が行われる。時にはメモ合わせを主導するリーダー格の記者の記憶が間違っていて、発言のニュアンスが変わってしまうこともあるという。
慣例としてオフレコ取材が続いているのは、政治家と報道陣の双方にメリットがあるからだ。
「政治家からすると、表立っては口にできない本音を言うことができる。『本音を言うから、俺の名前は出すな』ということです。また、『解散が近い』などの発言を記者に報じさせることで党内の引き締めを図ったり、野党を牽制したりする狙いもある。いわゆる観測気球として、永田町の動向を見るためにわざと記者に書かせることがあります。
一方の記者からすると、発言者が匿名でも記事にできるし、政治家の本音を知ることもできます。暗黙の了解のもと、後々に検証記事を書けるというメリットもあります」