「政治の劇場化」で匿名コメントに需要

 テレビ局の場合、匿名コメントを重宝する別の理由もあるという。

「テレビのニュースで大事なのは絵柄です。昔は誰が喋ったかわからないコメントだと個人の映像が使用できず、映像としてつまらないから匿名のコメントを番組で使うことはほぼありませんでした。ところが1990年代になると報道番組の放送時間が長くなり、ひとつのニュースにかける時間も長くなりました。実際に私の入社時は30分だった夕方のニュースが1時間、1時間30分の番組になり、ひとつの話題にかける時間も1分だったのが2分、面白ければ3分と、どんどん伸びていきました。

 とくに2000年に小泉純一郎氏が首相になると政治が劇場化しました。その際、『ある自民党幹部によると〜』『郵政民営化反対議員のひとりはこう言いました〜』という関係者コメントをニュースのスパイスとして使うようになった。テレビでは、匿名のコメントがニュースを面白くわかりやすく伝えるエッセンスになったんです」

 そう振り返る細川氏は、「そもそも、テレビのニュースで最初に匿名コメントを使い始めたのは僕だと自負しています」と続ける。

「小泉政権時は政治記者として『報道ステーション』に出演して、MCの古舘伊知郎さんに永田町の内幕を聞かれるたび、『ある自民党幹部は〜と語りました』と解説していました。ある時は、『自民党幹部は〜、別の幹部は〜。また別の幹部は〜』と続けていたら最終的に幹部が7人になって、ある先輩から『多すぎる』と言われた(笑い)。当時は揺れ動く政治状況をわかりやすく伝えるためオフレコのコメントを多用していましたが、その流れが現在もテレビのニュースで続いています」 

 政治の動きをわかりやすく伝えられる一方で、匿名コメントは発言者の責任の所在が曖昧になり、事後の検証ができない危険性や、政治家の特定の意図によって世論がミスリードされる恐れがある。

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