国際情報

習近平政権を揺るがす「治水」問題 洪水以上に渇水が課題に

河南省を襲った7月の洪水被害は広範囲に及んだ(AFP=時事)

河南省を襲った7月の洪水被害は広範囲に及んだ(AFP=時事)

 7月は西ヨーロッパと中国で大規模な水害が生じた。中国では黄河中流域に位置する河南省の被害が大きく、公式発表による8月2日までの死者は302人、行方不明者も50余人に及んだ。都市部までが冠水の被害を受けた同省では、農地面積約96万ヘクタールのうち約37万ヘクタールで今年の収穫が見込めないという。中国の歴史における「治水」の重要性について、歴史作家の島崎晋氏が解説する。

 * * *
 中国河南省を襲った「1000年に一度」と言われる大洪水の報道から、中国における治水の重要性を改めて思い知らされた。五帝と総称される神話伝説上の聖帝はみな、治水の功績によりその座についた。実在の為政者にとっても治水は重要で、より具体的に言えば、黄河と長江の二大河川、あるいはこれに淮河を加えた三大河川とそれぞれの支流を制御し、未然に氾濫を防ぐことが統治の要だった。

 氾濫が起きた場合、皇帝は被災者の救援に全力を尽くす必要があった。住む場所も食べるものもない大群衆が野に満ちれば、社会不安どころか、いつ反乱が起きてもおかしくなかったからである。

 中国史上屈指の名君とされる清の康熙帝(在位1661-1722)は、黄河の「治水」と「漕運」の整備を政策の柱として掲げ、あわせて130回も巡察に出かけている。そのうち6回は江南地方(中国南部・長江流域)へも足を延ばしていた。

 康熙帝が気をかけていたのは三大河川と大運河の管理である。前述の「漕運」は黄河と長江を結ぶ大運河を利用した水上による物資輸送のことで、これが経済の大動脈でもあった。

 河川も大運河も、定期的に底に溜まった土砂を浚渫しなければ、船の通行を妨げるだけでなく、氾濫の原因ともなる。堤防の修築も同様で、手抜き工事で浮いた金を懐に入れる地方官吏の不正が後を絶たなかったため、康熙帝はみずから睨みを利かせる必要を感じ、遠出を厭わなかったのだという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン