コロナ禍での撮影だからこそ、貴重な機会となったようだ。伊藤淳史が続ける。
「ずっと一緒に時間を共にしてきた仲間だったので、みなさんからお花をいただいたりお祝いのお品物をいただいたりした時は本当に嬉しかったです。
今の時期、みんなで盛り上がることは非常に少ないですよね。コロナ禍の前だったら、現場が終わった後に一緒にご飯を食べに行ったり、休日にみんなで飲みに行ったりすることも普通にありましたけど、今は当然ながら全くないですから。そういう中で祝福していただけたのは、僕個人としてもとてもありがたいことですし、みんなで盛り上がる機会ができたという意味でも嬉しかったです」
さらに、伊藤淳史、佐々木希、桐山漣の3人の良好な関係は、ドラマにおける“ある重要なシーン”にも滲み出ているという。
「第1話に、京都の鴨川で3人が仲良く会話するシーンがあるんですよ。あそこは初めて“本読み”をした時に監督から『3人が楽しく会話するシーンはほとんどないので、ここはとにかく良いシーンにしたい』と言われたんです。その時は僕はまだ第1話の台本しかもらっていませんでしたが、後になって振り返ってみると、そこが全ての原点で、とても象徴的なシーンだったというのが徐々にわかってくるんですね。
もはや3人が分かり合えることは一生ないんだという、人間関係におけるある種の絶望に直面したり、一樹という人間が最低なところに行ってしまったりした時に、そのシーンがたびたび出てきます。この前完成したばかりの第1話を観たんですが、監督が最初に言っていた意味がものすごく良くわかりました。物語が進むにつれて効いてくる大事なシーンだなと。
ただ、実はそのシーンを撮影したのはつい最近なんです。4月中旬にクランクインしてから現場で3か月間みんなと一緒に過ごしてきて、3人ともすごく仲良くなったんですね。そういう関係性もプラスの方向で表現できたというか、もしも4月の段階で撮影していたらちょっとぎこちなくなっていたというか、少なくとも完成したシーンほど良い空気感は絶対に出せていなかったなという気がします」
第3子が誕生し、新たな生活がスタートした伊藤淳史にとって、『白い濁流』もまた人生の転機となる一つのドラマとなりそうだ。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)