「14日にA子さんが妊婦であることがわかった段階で、なぜほかの総合病院や大学病院が受け入れなかったのか。このことは追及されてしかるべきだと思います。大学病院はコロナ以外の大きな手術を減らしていて、比較的ベッドが空いている。もし、満床だとかの事情がなければ、大変な責任問題でしょう」
感染妊婦に関する対策を放置してきた国や自治体の不備を、産婦人科医で小山嵩夫クリニック院長の小山嵩夫さんはこう指摘する。
「今回のような問題が起きてしまった大きな理由は、産科にも感染症患者を受け入れるシステムを作っていなかったからです。こういう状況になるのは、昨年からある程度予想できたはずですが、対応が遅れた。例えば中国の武漢では、緊急的に産科用のプレハブ病棟を造っています。大げさな施設はいらないので、一時的でも日本もそのような施設を準備しておけば、“感染妊婦”の受け入れもできたはず」
千葉県の健康福祉部医療整備課は8月20日、今回の件を受け、感染妊婦に関して次のような対応を発表した。
【1】周産期母子医療センターなどへの受け入れ体制を強化すること
【2】産科が併設されている医療機関の場合には、可能な限り自院で対応できる体制を整備・強化すること
【3】かかりつけ医師へは受け入れ先が見つかるまでの間、自院で対応することも想定した準備を行うこと
【4】従来はなかった、コロナに感染した妊娠36週未満の妊婦に対するマニュアルも作成すること。
まさにA子さんたち親子によってもたらされた新基準であるが、「失って気づいた」といえるほど、事態は甘くない。
※女性セブン2021年9月9日号