国内

コロナ感染妊婦が自宅で緊急出産後に新生児死亡 悲劇はなぜ起きたのか

(写真/PIXTA)

千葉で感染妊婦が自宅緊急出産したが、新生児が死亡。悲劇はなぜ起こったのか(写真はイメージ、Ph/PIXTA)

 新型コロナウイルスに感染した妊娠中の女性が、複数の医療機関から入院を拒否された末に、自宅で出産。その後、赤ちゃんが亡くなった──そんな悲しいニュースに日本中が注目している。感染妊婦への対応や医療機関同士の連携の悪さなどから透けて見えるのは、日本の医療体制のもろさだ。決して他人事ではいられない。

 お願い、息をして──女性が自宅で出産したとき、赤ちゃんは自分の力で懸命に小さな呼吸を繰り返していた。しかし、救急隊が到着したときにはすでに心肺停止。市内の救急病院に緊急搬送された後、死亡が確認された。女性の新型コロナウイルスの感染が確認されてから6日後の、あまりにも悲しすぎる出来事だった。

 千葉県柏市でひとり暮らしをしている30代女性のA子さんは、妊娠27週の8月2日、妊婦健診を受けに産婦人科へ足を運んだ。結果は特に異常なし。あと1週で妊娠後期に入ることに喜びと期待を抱きつつ、日に日に大きくなる胎動を感じていた。

 しかし、妊娠後期に入った同月9日、状況は一変する。発熱やせきなどの症状が出始めたのだ。この日は、千葉県内で過去4番目の多さであり、月曜日としては過去最多の感染者数となった(当時)、952人の新型コロナの感染者が確認された日だ。A子さんにも嫌な予感が走った。

 そしてその予感は2日後の11日に現実のものとなる。A子さんの新型コロナの感染が発覚したのだ。

「感染を確認した医師が柏市の保健所に提出したコロナの『発生届』には、どういうわけか妊婦であることが記載されていなかった。そのため市は“軽症のコロナ感染者”として対応したようです」(全国紙記者)

 自宅療養となったA子さん。孤独と不安ばかりが募るなか、彼女の症状は悪化の一途をたどっていく。

「保健所がA子さんにヒアリングし、妊婦であることを把握したのが14日。その後、A子さんの呼吸が著しく困難になり、中等症と判断されました。妊娠29週での出産は想定しづらいため、本人の治療を優先し、中等症のコロナ感染者として入院先を探しました」(柏市保健所職員)

 このとき、A子さんの血中酸素飽和度の数値は91%。96%未満はコロナ中等症にあたる。千葉県が定めた「入院優先度判断基準」では、この数値だけで「入院適応」になるほどの状況だ。

「酸素飽和度が1%下がるだけで呼吸が非常に苦しくなっていき、96%を切った患者さんは“人生でいちばんつらかった”と言うほどです。91%は呼吸不全の状態で、A子さんは自身とお腹にいる赤ちゃんの命の危険を強く感じていたでしょう」(医療関係者)

 翌15日から16日にかけて、柏市保健所が妊婦であることを複数の病院に伝えたうえで入院先を探すも決まらない。このとき、すでに千葉県内の病床使用率は76%を超え、ステージIVの指標である50%を大きく飛び越えていた。なんとかお腹のわが子は守りたい。苦しみに耐えながらA子さんは保健所からの連絡を待ち続けた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

上原多香子の近影が友人らのSNSで投稿されていた(写真は本人のSNSより)
《茶髪で缶ビールを片手に》42歳となった上原多香子、沖縄移住から3年“活動休止状態”の現在「事務所のHPから個人のプロフィールは消えて…」
NEWSポストセブン
ラオス語を学習される愛子さま(2025年11月10日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまご愛用の「レトロ可愛い」文房具が爆売れ》お誕生日で“やわらかピンク”ペンをお持ちに…「売り切れで買えない!」にメーカーが回答「出荷数は通常月の約10倍」
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《10代少女らが被害に遭った“悪魔の館”写真公開》トランプ政権を悩ませる「エプスタイン事件」という亡霊と“黒い手帳”
NEWSポストセブン
「性的欲求を抑えられなかった」などと供述している団体職員・林信彦容疑者(53)
《保育園で女児に性的暴行疑い》〈(園児から)電話番号付きのチョコレートをもらった〉林信彦容疑者(53)が過去にしていた”ある発言”
NEWSポストセブン
『見えない死神』を上梓した東えりかさん(撮影:野崎慧嗣)
〈あなたの夫は、余命数週間〉原発不明がんで夫を亡くした書評家・東えりかさんが直面した「原因がわからない病」との闘い
NEWSポストセブン
テレ朝本社(共同通信社)
《テレビ朝日本社から転落》規制線とブルーシートで覆われた現場…テレ朝社員は「屋上には天気予報コーナーのスタッフらがいた時間帯だった」
NEWSポストセブン
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《愛子さまのラオスご訪問に「感謝いたします」》皇后雅子さま、62歳に ”お気に入りカラー”ライトブルーのセットアップで天皇陛下とリンクコーデ
NEWSポストセブン
竹内結子さんと中村獅童
《竹内結子さんとの愛息が20歳に…》再婚の中村獅童が家族揃ってテレビに出演、明かしていた揺れる胸中 “子どもたちにゆくゆくは説明したい”との思い
NEWSポストセブン
日本初の女性総理である高市早苗首相(AFP=時事)
《初出馬では“ミニスカ禁止”》高市早苗首相、「女を武器にしている」「体を売っても選挙に出たいか」批判を受けてもこだわった“自分流の華やかファッション”
NEWSポストセブン
「一般企業のスカウトマン」もトライアウトを受ける選手たちに熱視線
《ソニー生命、プルデンシャル生命も》プロ野球トライアウト会場に駆けつけた「一般企業のスカウトマン」 “戦力外選手”に声をかける理由
週刊ポスト
前橋市議会で退職が認められ、報道陣の取材に応じる小川晶市長(時事通信フォト)
《前橋・ラブホ通い詰め問題》「これは小川晶前市長の遺言」市幹部男性X氏が停職6か月で依願退職へ、市長選へ向け自民に危機感「いまも想像以上に小川さん支持が強い」
NEWSポストセブン
割れた窓ガラス
「『ドン!』といきなり大きく速い揺れ」「3.11より怖かった」青森震度6強でドンキは休業・ツリー散乱・バリバリに割れたガラス…取材班が見た「現地のリアル」【青森県東方沖地震】
NEWSポストセブン