河野太郎・規制改革相の父・河野洋平氏(写真=Avalon/時事)

河野太郎・規制改革相の父・河野洋平氏(写真=Avalon/時事)

宿命に逆らったはずが

 そして河野氏も、「持論を譲らない」という河野家のDNAを受け継いだ。若手議員の頃には外交問題など国会の採決で造反、処分を受けて「自民党の異端児」と呼ばれ、党の方針に逆らって「反原発」を唱えてきた。しかし、父たちと違うのは、「総理の座」を目指し、河野家の宿命に逆らおうとしていることだ。

「(総理に)なれる家系、なれない家系を気にしてもしょうがないと思っている」

 河野氏は2009年の総裁選出馬の際、「総理になれない家系」のことを質問されてそう答えた。総理になるために持論も引っ込めた。異端児の河野氏は自民党内で出世が遅かった。初入閣は初当選から20年目、15年の安倍内閣の規制改革相就任だった。このとき親分の麻生太郎氏から踏み絵を迫られる。

「持論を封印して自ら総理大臣になってから実行するか、大臣になることを諦めるかを選べ」

 河野氏は反原発など持論を封印して大臣就任の道を選ぶ。祖父や父とは違う選択であり、“変節”批判を浴びたが、踏み絵を踏んだことで、出世の道が拓けたのは事実だ。安倍内閣で規制改革相、外相、防衛相を歴任し、菅内閣でも入閣、ワクチン担当相としてコロナ対策の檜舞台を与えられた。

 その河野氏にいま、祖父や父と同じ「壁」が立ちはだかっている。洋平氏とともに新自由クラブを立ちあげた経験を持つ山口敏夫・元労相が指摘する。

「河野氏の総裁選出馬を阻んでいるものが2つある。1つは同じ神奈川選出の菅首相への遠慮。河野氏は菅さんに引き上げられてきたため、総裁選で対決しにくい。

 それ以上の障害は麻生氏でしょう。麻生氏は派閥会長を続けたいから、河野氏の出馬を認めない。池田首相から政権禅譲を期待した河野一郎が吉田茂と門下生に阻まれたのに似ている。一郎氏の孫が、吉田茂の孫に総裁選出馬を止められている。しかも、自民党内で数を持っていない河野氏にすれば、続投した菅首相の後継者として政権禅譲を受ける可能性が高い。だから、菅首相と対決もできない」

 河野家の宿命に逆らったつもりが、同じように搦めとられている。洋平氏と野党時代の自民党再建にあたった亀井静香氏が語る。

「河野太郎にとってむしろチャンスだ。政府のコロナ対策では菅後継は選挙に勝てない。河野君は麻生が止めるのを振り切って出馬会見を開き、菅総理に『ご苦労様。あとは私に任せろ』と宣言して勝負に出るしかない」

 果たしてその決断はできるのか。

※週刊ポスト2021年9月10日号

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