西川も当たってしまった

西川も当たってしまった

「異物混入はワクチン製造においてまれに発生しますが、重大な違反につながる可能性があり、きちんとした調査が必要です。特に今回は日本の目が届かないスペインの工場で製造したので、管理体制に不安が残ります」

 すべてのカギはスペインの工場が握っている。そこで『女性セブン』取材陣は現地を取材した。

PR担当者がまさかの対応

 異物混入ワクチンは、モデルナ社が委託するスペインの製薬会社「ラボラトリオス・ファルマセウティコス・ロビ(以下、ロビ社)」の工場で製造された。ロビ社は1946年に設立された製薬会社で、血栓などを防ぐ抗凝固薬ヘパリンを主力製品とする。ほかの製薬会社からの委託製造も主要な事業であり、米メルク社やスイスのノバルティス社などからライセンス提供を受け、複数の医療用医薬品を製造・販売する。

 今年4月、ロビ社はモデルナ製ワクチンの製造委託契約を結び、年間12億〜14億回分のワクチンを製造するようになった。別の工場で製造された、米国向け以外の新型コロナワクチンをバイアル(小瓶)に充填する作業を行ったのが、異物混入が発生したと思われる「マドリード・サン・セバスチャン・デ・ロス・レイエス工場」であり、ロビ社は声明で同工場の製造ラインに問題があった可能性を認めている。

 8月30日早朝、現地在住の『女性セブン』取材スタッフはマドリード郊外にある、この工場を訪れた。面積は想像していたより狭く、小ぶりなショッピングモールほどの敷地内に低層のコンクリート建ての工場がある。工場というより、研究所のイメージといった方がわかりやすいかもしれない。

 周辺に歩行者の往来はほとんどなく、車が行き来するのみ。幹線道路の壁にはスプレーで落書きがされていて、どことなく劣悪な印象を受ける。現在、その工場で働く従業員は約140人で、2022年までに年間30億回分のワクチン製造が見込まれている。午前8時が近づくと、従業員の運転する車が続々と工場に吸い込まれていく。始業時間が迫っているようで、ほとんどの車がスピードを落とすことなくゲートを通過する。

 唯一、歩いてゲートへ向かう30才前後の男性従業員に声をかけた。挨拶を交わして異物混入について尋ねると、最初は親切そうだった男性の表情が一変する。

「ぼくはまだ働き始めて2か月なので、建物のなかの受け付けで聞いてくれ」

 そう早口で告げられた。彼の言葉に従ってゲートを抜けて建物の方に向かうと、50才くらいの女性の守衛が駆け寄ってきて、「どんな御用ですか」と尋ねてきた。

「異物混入事件について、お話を伺いに来た日本のメディアのスタッフです」

 そう答えると守衛は驚いた表情を浮かべつつ、「担当者を探してくるから、ちょっとここで待ってて」と笑顔を見せ、建物内に向かった。5分ほどでその守衛が戻ってくると、「PR担当が不在だからここに電話して」と担当者の名前と電話番号、メールアドレスを記したメモを渡された。

 だが、その番号に何度もかけるがつながらず、困っていると柔和な女性の声で折り返しがあった。だが、「日本のメディアのスタッフ」を名乗った瞬間、受話器の向こうにいる女性は何も言わずに電話をガチャリと、突然切った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン