実名制は韓国も失敗した。確かに、日本でもFacebookの一部ユーザーなどは実名どころか顔から所属先まで晒して他者を攻撃していたりする。自営業や年金者に多い印象だが、前者はともかく後者はある意味で無敵、ほのぼのと孫の写真を晒したそばから誹謗中傷を繰り返している(それも全公開設定!)。無くならないというのが現実だろう。
「個人的な考えですけど、中国の信用スコアとか効くんじゃないですか? たとえばネットなら誹謗中傷を繰り返せば手持ちのスコアが減るとか。それで就職とかローンとか、子どもの進学にも影響あるみたいな。それでお互い点を見ることができるシステムなら他人を気にする日本人に効くと思うんですけど、こいつは何点か~って点数見られる感じで」
こんな気持ち悪い全体主義、筆者は無論反対だが、これくらいしないと匿名の誹謗中傷、ネット上の暴力は無くならないと思わされるのもまた事実。2021年4月に改正プロバイダ責任制限法が成立、公布されたが、この程度ではかつての青井さんのようないわゆる「無敵の一般人」には効かないように思う。
自分自身が幸せになればやめられると思う
「自分はもうしてませんけど、いまも独身で仕事もだめだったら別のタゲ(ターゲットの意)を探していたと思います。みんなが幸せになればいいんでしょうけど、それは無理でしょう。だったら、誹謗中傷は無くならないでしょうね」
どこか他人事、誹謗中傷当事者の言葉だけに違和感しかないが、当たっているだけに筆者もこの話を終えたあと、さてどうルポを結実させようか考えてしまった。なのでせめて、青井さんとの一問一答が参考になればと改めて記す。なぜ誹謗中傷するのか、その心理の一例にはなるだろう。その公表は青井さんも望んでいる。匿名掲示板でもSNSでも誹謗中傷の心理そのものに違いはないだろう。
――なぜ少女が苦しむほどに、あることないことを書き込んだのか
「最初はファンだった。何度かイベントや撮影会で会ったが塩対応で態度が悪く、自分の思ったような子じゃなかった。よかれと思って年上としてアドバイスしたつもりが、気持ち悪がられて腹がたった。叩き始めると彼女のことばかり考えるようになった。純粋なファンのときより叩きはじめた後のほうが彼女のことばかり考えていたように思う」
――少女の仕事や生活を脅かすとは思わなかったのか。
「当時は彼女の活動が仕事だという感覚はなかった。自分の娯楽としか見ていなかった。際どい水着でおっさんに媚び売る子どもと、どこか下に見ていたのかもしれない。はっきりいってオカズだった」
――和解したが誹謗中傷が引退のきっかけかもしれない、罪悪感はあるか。
「そこは芸能人として見ていた。有名税だからという免罪符はあったと思う。罪悪なんて大げさな話ではなく、あくまでネタだった」
――青井さんには過去かもしれないが彼女は忘れていないかもしれない。
「それはキリがない。一生気にすることとは思わない。忘れて欲しいと思う」