青井さんがネットで誹謗中傷した少女はグラビアアイドルといってもメジャーな芸能人ではなく、露出度の高いマイクロビキニやふんどしを着せるようなイメージビデオに何作か出演しただけの少女だった。2000年代中盤、とくに過激な作品が乱発された時代だ。
「イベントや撮影会に何度か行ったんですが、彼女の対応が気に入らなかったんでネットに書き込んだのが最初ですね、自分としてはネタでした」
秋葉原のビデオ店やパソコンショップにはこうした新人グラドル御用達の小さなイベント会場がある。また少数のファンを集めて小さな撮影会を開いたりもする。青井さんはそこで実際に会い、やがて幻滅した。恋愛感情か。
「どうでしょう、かわいいとは思ってましたし、付き合えればそりゃ嬉しいでしょう。(その少女のビデオを)オカズに使ってたのも事実です」
消費対象かという筆者の言葉に、「そう、そんな軽い感じです」と大きくうなずいた。青井さんはこんな軽い感じで攻撃を始めたわけだ。あることないこと書きたてて。少しミソジニー(女性嫌悪)をこじらせていたのでは?
「それはあるかもしれません。理想の少女を勝手に作って、勝手に憎悪したわけで。それに匿名ならバレませんから。自分だけじゃなく、他にもアンチはいましたから」
他にもいる、は常套文句だ。しかし匿名でも実際は匿名ではない。しかるべき手順で開示請求して、地道に辿れば足はつく。
「でもね、わかってて言ってると思うんですけど、お金持ってて影響力も桁違いの芸能人なら本気出せばできるかもしれませんが、普通は無理ですよ」
残念ながらそのとおり、誹謗中傷に断固とした対応で臨むと宣言した中川翔子さんのような大物芸能人ならともかく、ニッチなグラドルやコスプレイヤー、地下アイドルなど事務所も小さく資力もないどころか無所属の場合、資金的にも個人レベルでは誹謗中傷に真っ向から立ち向かうのは現実的に難しい。小金井ストーカー殺人未遂事件のように警察が動くほどの目に見える犯罪被害でもない限り、泣き寝入りかスルーというのが実情だ。誹謗中傷の主戦場がSNSに移ったいまも、多くの被害者が苦しんでいる。
ネットってその辺の一般人最強ですから
「自分はその子とリアルで知り合ったから足がつきましたけど、まあ一切会ってなければ(特定は)無理なんじゃないかな、まして当時(2000年代)では珍しいと思います」
青井さんは撮影会などでリアルに接していたことや生来のおしゃべりが祟り、察した事務所関係者に問い詰められた末に訴えると脅されて和解となった。つまりは民法上の「訴え提起前の和解」であり、実際に裁判所に出頭した上で二度と誹謗中傷をしないこと、近寄らないこと、という誓約書を作成させられたという。微々たる額だが和解金も支払った。