──投資したお金は返ってきましたか。
「はい。でも全額ではありません……。ただお金のことよりも、娘に迷惑をかけてしまったことがつらい。娘は『大丈夫、大丈夫』と言って、私を全然責めないんです。それどころか、私が友達が少ないということを知っているので『お父さんもおらんし、お母さんもたまにご飯行けてよかったね』と言ってくれた。
お金についても『返らんかったら、返らんでええよ』って。親が言うのもおかしいけど、すごく優しい子で、いつも元気に心配をさせないよう気を使ってくれています」
そう言うと母は涙を浮かべて、こう言葉を絞り出した。
「娘に迷惑をかけてしまった……でも本人は『大丈夫』と言ってくれて。本人が(コロナ感染で)大変なときにこんな心配をかけちゃって……もう、ろくでもない親ですよね」
綾瀬にとっても1億円はわずかな額ではないはずだ。しかし彼女は何度も「お母さん、お金はいいから」と母に声をかけていた。高齢者を狙った甘い投資話には注意が必要だが、当事者は気づきにくいもの。今回のケースのように、母と子の思いやりの交換こそが、そうした窮地を救うのかもしれない。
※女性セブン2021年9月30日・10月7日号