価格見直しなら開発方針にブレも
もう一点、ホンダが課題として挙げていた価格だが、これについては筆者はそれほど高いとは思わなかった。今回テストドライブしたクロスターの価格はルーフレール込み、カーナビレスの場合で250万円台。これでステアリング制御ありのADASやフルタイムAWDがコミコミなのである。
価格の見直しを行う動機はアクアの登場であろう。フィットと同様、ステアリングアシスト付きのADASを装備し、燃費性能では大きく上回るアクアはフィットとほぼ同一価格。完全にフィットを狩りにきている感がある。ホンダとしてはこれ以上顧客をトヨタに奪われたら死活問題であるだけに、価格見直しを志向するのはある程度仕方がないところもあろう。
しかし、価格引き下げの絶対条件となるのは、今のフィット、とくにハイブリッドの乗り心地や静粛性を損なわないことだ。フィットが粗利を十分に確保できていれば今の味のまま価格を少々引き下げても大丈夫だろうが、そうでなければ必ずコストダウン問題が生じる。もちろんコストダウンはこれまでも必死の思いでやってきたことは想像に難くなく、やるとすれば装備をはぎ取るか、目に見えない部分をより安価なものに交換するかだろう。
グレードダウンの誘惑にかられやすい大物部品としてはショックアブゾーバー、足まわりのラバーブッシュ、遮音材、シートのウレタン等々が定番だが、これらがいちいち第4世代フィットの良さを形成する重要部品であるのが痛いところだ。
カーマニアでもない普通の顧客の多くは改良前と後のモデルを乗り比べたりするわけではないし、少々雑になっても気づかないかもしれないが、せっかく味で勝負しようとした開発方針がブレてしまうと今は良くても後々クルマ作りのバランスを崩してしまうことにもつながりかねない。