ネット時代に新聞広告17億円も必要なのか
ネット時代にあって、全国紙やブロック紙、地方紙への政党や候補者の広告掲載に巨額の税金を投入する意味がどれだけあるのだろうか。
総務省情報通信政策研究所のメディア利用時間に関する調査結果によると、ネットの168分に対し新聞はわずか8.5分、ネットの行為者率87.8%に対し新聞は25.5%(令和2年度)である。20代の新聞閲読時間は、なんと1.7分、行為者率6.3%である。
こうした状況で、候補者や政党は選挙運動としての新聞広告が認められ、費用も規定回数分については国から支払われる(選挙公営)。しかし、ネットに関してはウェブサイトや電子メール利用による選挙運動用文書図画の頒布は解禁されたが、選挙運動用の有料インターネット広告は禁止されている。このため選挙公営の対象になっていないのが現状だ。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう指摘する。
「新聞広告に多額の予算が使われていることは、確かに新聞が主要なコミュニケーションツールだった時代は分かるが、いまは新聞以外のツールも多い。特にネットが生活のメインになっている中で、広報予算の配分や転換をすべきでしょう。
さらに、ネット投票など新しい選挙システムを構築することは急務でそれと同時に連動する形で選挙関連予算の中身の見直しをすべき時期に来ているのではないでしょうか」
また、総選挙の経費が何にどう使われたのか。メディアの詳細な報道もほとんどなく、国民は蚊帳の外に置かれている。この点も是正すべきだろう。鈴木氏が続ける。
「選挙は国民が唯一政治に参加する手段で、国民主権を具現化する仕組みです。それを実現するために、広報予算などが偏ることなく、老若男女、生活の様式などに左右されず差別されず等しく使われるべきです。
したがって、通常の予算以上に平等性、透明性が必要です。しかし、現実には予算の内訳などあまり知られていないので、国会できちんと予算の際と決算の際に詳細を明確にすべきです」
前回の総選挙は600億円近い税金が選挙経費に使われながら、投票率は過去2番目に低い53%台にとどまった。国民の関心を惹きつけ、投票率を上げるためにも経費の使い方を改善してほしいものである。