筒井康隆の名著を15秒で紹介(TikTokより)

筒井康隆の名著の魅力を短い動画にまとめ紹介(TikTokより)

「『普段あまり本を読まない10代の方々には、いわゆるライト文芸が向いているんじゃないか』と考えて、初期の頃は、表紙にイラストをあしらった小説を“読みやすさ”を重視してアピールすることが多かったです。僕はもともと少し物騒なジャンルを読むことが多いのですが(笑)、試しにジャック・ケッチャムさんや小林泰三さんの作品を紹介したところ、『こういう小説をもっと知りたい』という要望がたくさん寄せられました。

 そこで『紹介の仕方さえ良ければ、ちゃんと反響は生まれる。バズらないジャンルなんてないんだ』と気づき、あまり作品のテイストは気にせず、素直に紹介したいと感じた作品を紹介するスタイルへと変わりました。

 大変光栄なことに『残像に口紅を』は、僕が紹介してから8.5万部増刷されたそうです。筒井康隆さんは偉大な作家ですが、やはり30年以上前の作品となると、かなりの読書好きでないと若い世代には馴染みがないのではないかと思います。それでも上手く紹介することができれば、ちゃんと若者にだって届くし、数字という結果にも表れるんです」(けんご氏)

 けんご氏はキャリアの浅い作家の作品も紹介して、結果として重版に繋がったこともある。ジャンルや知名度は関係ない。作品の魅力がしっかり伝わるように紹介できれば、普段読書をしない人にだって興味を持ってもらえる。そんな信念のもと、けんご氏は、時には「推し」などの流行り言葉も使って、若者目線での作品紹介を続ける。先述の『残像に口紅を』を取り上げたときは、「世界から言葉がひとつずつ消える」という実験的な設定に加え、「切なさ」もアピールしたのが、彼流の紹介の仕方だ。

 小説を紹介する上で、重版は常に意識している目標だ。業界全体を盛り上げ、読書好きを増やす。その壮大なビジョンのために、けんご氏はTikTok以外にも活動を広げていくことを考えている。最後にけんご氏が考える小説の魅力とは何だろうか?

「漫画やアニメの登場人物は、名前を聞いたら誰もが同じイメージを思い浮かべるでしょうが、小説だとそうはいきません。同じ小説を読んでも、100人いれば100通りのイメージを持ちます。『自分の想像力を使わなければいけない』というのが、小説ならではの面白さだと感じています」(けんご氏)

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン