敏捷性抜群の大穴モデル/クラリティPHEV(ホンダ)
ホンダが2018年に環境技術を誇示するべく日本市場に投入したプラグインハイブリッドカー「クラリティPHEV」。だが、ひと月に10台も売れないという極度の販売不振に陥り、今年9月にディスコン。圧倒的不人気車…というよりエンドユーザーにその存在をほとんど知られないまま終わった格好だ。
売れなかった理由は明白。第一に約600万円という価格、内外装の質感がその価格に見合うものでは到底なかったこと、そしてとても600万円のクルマには見えない内外装のデザインといったところだ。
とはいえ、クルマの出来そのものは非常に良いものだった。2モーター式ストロングハイブリッドに総容量16kWhのバッテリーを組み合わせたプラグインハイブリッドシステム「i-MMD Plug-in」は、全長4.9m級のセダンボディをほぼ電気自動車のように走らせるパワフルさがあった。
走行用電気モーターの最高出力は135kW(184ps)だが、バッテリーからの電力だけで推定100kW(136ps)強くらいまではエンジンをまったく起動させずに発揮することが可能。体感的にはバッテリー式純EVとほとんど変わりがなかった。
また、エンジンによる発電を併用しての全開加速は爽快の一言で、羽のように軽々としたパワーフィールだった。実走行でのEVレンジ(バッテリーの電力を使った航続距離)は都市部で70km、郊外路では100km前後に達した。
車体側も非常に良く作られていた。ボディシェルは大変強固であったし、サスペンションアームは四輪ともアルミニウム製と、プレミアムセグメントのごときこだわり。前輪の食いつきが非常に良く、ワインディングロードもガンガン走る気にさせられる敏捷性だった。
いくら性能やドライブフィールが良くても、デザインや質感におよそ見合わない600万円という価格の時点で世間から無視され続けてきたクラリティPHEVだが、実は中古が超魅力的だ。
3年落ちのモデルで新車時の半額から6割程度というのが相場だが、何しろ一般ユーザーがほとんどおらず、ディーラーの試乗車や公用車のリースアップがほとんど。ド新品同然というタマが多いのだ。
600万円ならお話にならなかったが、300万円台前半ならデザインや質感には目をつぶり、テイストや先進性を味わう余地が出てくる。乗り潰す気で乗るならば、わりと大穴なモデルと言える。