もちろん本書は、場末の格闘家が死ぬまで殴り合う「ふじみのちょんぼ」や、食を巡る暴走が恐い「箸魔」など、血生臭い描写にも事欠かない。だんだんそれに慣れていく自分が怖いような気もするのだが。

「いいのよ、慣れて。今の国会なんて魔の巣窟だしさ、これくらい読めなきゃ今の世の中、生きていけないよ。それでも今回は『意外にマイルド』と言う人もいて、要するにいろんなメニューがある街の中華屋だよね。一番高くてもカニ玉みたいな。しんどい時や腹ペコな時に、誰かが読みに来てくれたらいいのかなって」

 究極の目標は「野良でも平気な人間を増やすこと」。一見ろくでもない人たちのここぞという美点や間違いのなさを描き、偽善者には一転手厳しい平山作品は、それこそ帯にもあるように、どんなにハズレな人生でもおしまいにする前に読みたい、〈明日なき世界の福音〉なのだ。

【プロフィール】
平山夢明(ひらやま・ゆめあき)/1961年神奈川県生まれ。法政大学在学中からホラー映画の自主制作を手がけ、1993年より実話怪談『「超」怖い話』シリーズへの参加やノンフィクション作品『異常快楽殺人』の執筆など幅広く活動。2006年「独白するユニバーサル横メルカトル」で日本推理作家協会賞短編部門、2010年『ダイナー』で日本冒険小説協会大賞と大藪春彦賞。著書に『他人事』『或るろくでなしの死』『暗くて静かでロックな娘』『ヤギより上、猿より下』等。178cm、76kg、B型。

構成/橋本紀子 撮影/朝岡吾郎

※週刊ポスト2021年10月29日号

関連記事

トピックス

女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン