再び感染拡大すれば「中止」が前提か
また、前回露呈した別の問題として、「Go Toトラベルとコロナ感染拡大の因果関係の有無」についても意見が拮抗した。特に観光業界からは「直接的な関連はない」とする意見がデータと共に多く出されたものの、感染症の広がりによる中止という経緯もあり、それぞれの主張はその後も対立してきた。
現在でも感染拡大の因果関係はGo Toトラベルの是非を問うテーマとしてクローズアップされ続けている。
仮に因果関係が無いとすれば、今後の感染動向に関係なく推進されるべきだが、Go To 2.0においてもスタート後に感染が再拡大した際には再び中止することが前提にあるとされる。
現状ではワクチンの接種証明や検査の陰性証明を提示すると割引率がアップするなどの策も検討されているが、いずれにしても線引きの難しい問題だけにリスタートへの課題は多い。
制度の隙間をつく不正や値上げ
筆者個人の所感をいえば、前回は見切り発車かつコロコロ変わる補助内容に評論家として責任ある発言ができないと考え、Go Toトラベルのスタートから3か月間あまりメディアからの取材や直接的なオファーはすべて辞退した。
事の成り行きをある種“静観”していたわけだが、やはりというか、メディアも観光業にかかわる専門家も含め、“Go To万歳”とばかりにアクセルを踏みまくる異様な状態になっていった。
ホテル予約に関しても、制度の隙間を突いた裏技的なテクニックが拡散し、困惑するホテル関係者から相談を受けたこともあった。ホテルのプランが炎上したことも一度や二度ではない。
他方、事業者による制度の不正利用も相次いだ。不正とはいわずとも、便乗的な値上げは散見されたし、制度の趣旨から逸脱する利用は事業者・利用者双方でみられた。
盛り上がりを見せる一方で、ホテルの現場が混乱し、疲弊していく姿を敢えてレポートすることも、ジャーナリストの立場としては肝要と考え、3か月を経てメディアからの依頼を受け始めて以降は、テレビやラジオの出演や解説で「Go Toトラベルの裏で起きていること」を伝え、何度も警鐘を鳴らしてきた。
案の定、感染症拡大により一転、中止となった後には踵を返すかのように総括を試みる記事やメディアが目立ってきたが、“あれだけ煽っておいて……”という声は当然のように広がり、Go Toトラベル肯定派と否定派の溝をますます深くした。
そして今回のリスタートについても同様の議論を引き起こしている。