衆議院議員総選挙において甘利明氏が小選挙区で敗北、幹事長辞任に追い込まれたことは、自民党内に大きな波紋を呼んでいる。影響は今後、閣内のパワーバランスにも及ぶと語るのは、自民党関係者だ。
「岸田内閣の初入閣組には、甘利氏が押し込んだ人材が揃っています。象徴的なのが山際大志郎氏で、麻生派のなかでも同じ神奈川県の選挙区で甘利氏の右腕として知られており、閣僚人事では甘利氏がかつて務めていた経済再生相に就きました。
牧島かれんデジタル相も同じく甘利氏が熱望したと言われています。彼女の場合、もともと神奈川県17区では河野洋平氏の地盤を引き継いで当選しており、麻生派でもあるため、先の総裁選では河野太郎氏を応援しました。が、総裁選後は同じく麻生派ながら河野氏と反目する甘利氏に、大臣ポストをエサに『どっちにつくのか』と踏み絵を踏まされ、結果として初入閣を果たしました。
しかし、今回甘利氏が辞任したことで、2人は強い後ろ盾を失ってしまいました。今後は閣内で難しい立場に置かれるかもしれません」
経済再生相、デジタル相とも、財務相や経済産業相など、既存の閣僚と役割が重なる部分が多い。甘利氏はそうした既存省庁の枠を越えたダイナミックな経済政策を進めようと2人を閣内に送り込んだとされる。しかし、甘利氏自身が幹事長から外れたことで、その計画は早くも頓挫してしまった。
「今後の経済政策は、麻生太郎氏が後ろ盾となる鈴木俊一財務相や、実力派閣僚の萩生田光一経産相が中心となって進められ、甘利氏の影響力は及ばなくなる。そうなると、山際氏や牧島氏は、大臣としてあまりすることがなくなり、徐々に大臣ポストが有名無実化していってしまうかもしれません」(同前)