日本での販売台数が伸びない理由
さて、アメリカ、ヨーロッパ、中国の三大市場で快進撃を続けているテスラだが、日本市場では果たしてどうなのだろうか。テスラは日本における販売台数を公表していないが、JAIA(日本自動車輸入組合)の販売データの「その他」の多くがテスラとみられている。
そのスコアは2680台と、すべてがテスラだったとしても海外に比べて非常に少ないが、これでも前年比310%の大幅増。今年3月、日本での販売モデルを中国生産車に切り替えて主力グレードのスタンダードレンジプラス(航続距離430km)、ロングレンジ・デュアルモーター(航続距離580km)の価格を大幅に引き下げたことが寄与しているものと考えられる。
それでも海外市場に比べると日本での販売台数はごく控えめだ。果たして今後、テスラ車が日本市場を席巻することはあるのだろうか。
まずはもともと燃費の良好なクルマが非常に多い日本ではユーザーBEVへの関心が薄い。また、大都市への人口集中の度合いが世界の中でもきわめて高く、自宅充電ができないユーザーが多いという問題がある。それらが何とかならない限り、テスラだろうがそれ以外のメーカーだろうが、BEVの販売台数を劇的に増やすことは難しいだろう。
海外メーカーにとっては日本の独自充電規格であるCHAdeMOに適合させないと、公共充電ネットワークが使えないという課題もある。テスラはアダプタを介せばCHAdeMO充電器に接続することも可能だが、入力が50kWまでに制限されるため、現状では大容量バッテリーを搭載するテスラ車の特質が生きない。
テスラにはもう一つ、サービス網が弱く、故障や事故による損傷の修理費用が非常に高いという弱点もある。日本のユーザーはとかく安心感を重視する傾向があるので、何かあったときに柔軟に対処してもらえるようなサービス網がないと、結局のところ他のブランドに流れてしまうだろう。